山本彩
ハイジャンをやってる選手
いや、この辺の人なら
誰でも知ってる名前やった
Jrオリンピック金メダル候補
いろんな大会で優勝し続けた
(彩ちゃん今日も朝練?)
「あ、うん!
行ってきまーす!」
皆に期待されてる
私を必要としてくれてる
だから頑張れた
シュッ…ドスッ
「うわっ!彩また自己ベスト更新」
「さすが私や」
「うわぁナルシ」
「何やねんっ」
(彩すげぇな)
(彩カッコイイー!)
(頑張れ彩)
毎日が楽しくて
飛ぶのが楽しかった
そう、あの日まで
大きな大会
この大会に勝てば
オリンピックへ一歩近づく
気合は充分やったんや
それなのに…
『3階休憩スペースまで来てください』
こんな紙があった
なにかの招集?
そう思ってきたけど
誰もいなくて
戻ろうと階段に一歩踏み出す時やった
ドンッ!!
「え…?」
いつもと景色が違う
飛んでるんじゃない
押されたんや…
ドンッドスッドーーンッ!!!
目を覚ましたら病院の
ベットやった
すぐに医者が来て
言われたのは
両足複雑骨折
大会はおろか練習にもでれない
もしかしたら、歩くの難しいかも
私の心は沈んだ
(彩ちゃん…)
おばさんは明らかに
なんて声をかけたら?って
感じで
遠慮がちに声をかける
(お友達が…部活の子が)
私は車椅子を押して
仲間の元へ行く
ちゃんと謝ろう
少し心が晴れていた
だって仲間に会えるんだから
見慣れたジャージの塊を見つけ
声をかけようと後ろから
近づいた
でも、聞こえてきたのはあまりにも
残酷やった
(こんなときに怪我なんて)
(押したやつ彩の振ったやつやって)
(そんなんでこっちまで迷惑かけるなんてな)
(自分ひとりがエース面してなぁ)
(私も思ってた)
(あーあめんどくさ)
(大会出れへん彩に価値ないよなー)
言葉一つ一つが胸に刺さる
(まーちゅんは?どー思う?)
「え?」
茉由…
「まぁーそーやな!」
「…」
「まーとりあえずお見舞いに
彩っ…」
部員全員の顔が青ざめる
私は今どんな顔してる?
きっと恐ろしく狂気に満ちてる
「さ、さやかあのな?」
「…っ帰れ」
「…」
「帰れ!!2度と来るなっ!!!」
慣れない車椅子を
全力で漕いだ
病室近くでこけたけど
自分で起き上がれなかった
情けなかった
自分が…
許せなかった
自分が…
「なんでっ…だよっ…」
「そっから
リハビリして歩けるように
なったんや
でも飛べるか分からへんし
飛んでも辛いだけや」
「先輩…」
「まぁもうええから
ハイジャンはやめた
もう、あのときの山本彩は」
「同じ人間なって
どこにもいませんよ」
「え…」
「過去の山本彩は
過去の山本彩でいいやん
今の山本彩でいいやんか」
「…今の私を誰が」
「ここにおるやん
私は先輩が好き
たとえ輝いてなくても
好きやから」
「…」
「それに先輩…
ハイジャンやりたいんでしょ?」
「やりたくない」
「毎日見つめてるじゃないですか
そこにあるのシューズでしょ?」
「ちゃう!」
「ホンマは戻りたいんでしょ!」
「ちゃう、ちゃう!」
「…ご両親との繋がりやから」
「っ…」
「飛んでる時は
繋がってる気がした…
違いますか?」
「なんで…」
「先輩のペンダント
ご両親の写真入ってますよね
前に寝てる時見ちゃいました…
昔の先輩の活躍も調べて
そのとき
飛ぶ前にいつも握ってるって
書いてたから
もしかしたらって」
「…」
「先輩、もう1人じゃない
1からでいいじゃないですか
過去の自分をライバルじゃなくて
今の自分をライバルにしましょう?」
「っ、私に…できるかな?」
「できます先輩なら
私が先輩飛ばせてあげますよ」
「なんで上からやねん…」
「彼女ですから」
「した覚えない」
「ヘヘヘッ」
「…フッ」
「あ///」
「なに」
「笑ったと思って」
「…なんやねん」
「別に?」
「…なぁ渡辺」
「なんですか?」
「飛ばせる言うたんやから
最後まで付き合えよ」
「え?」
「…朝早いからな」
「フフフッモーニングコール
お願いしますね?」
「自分で起きろアホ」
「えー!」