「しゃーか」
「ん?」
「…んーん何にもない」
「美優紀?」
さっきからこればかりや
ホンマは理由を聞きたい
じっくりと向き合いたい
でも仕事がある
勝手な言い訳や
美優紀からすれば
でも仕事をおろそかにもできひん
「はぁ」
「彩ちゃん」
「姉ちゃん…」
「仕事でスポンサーさんに挨拶
彩ちゃん収録待ち?」
「まぁそんな感じ…」
「はいコーヒー
彩ちゃんこれ好きやんな」
「ありがとう…」
「何かあった?」
「え?」
「フフフッ」
楓子姉ちゃんは昔からこうやった
私が一人の時とか
辛いとき悲しいときは
私が好きなもの持ってきて
隣に座って
話を聞いてくれる
それがどれだけしょーもなくても
長くても
姉ちゃんはずっと聞いて
最後は大丈夫って
抱きしめてくれた
「美優紀と向き合えてないんや
向き合いたいけど
仕事のせいで…
それを理由にしてる自分も
嫌なんや…」
「…彩ちゃんは完璧で
ありすぎるんやない?」
「え?」
「いい加減に見えるけど
ちゃんとやるって決めたことになると
彩ちゃんは見えなくなるから
無理…してるんやで」
「でも美優紀には我慢させてばかりで」
「それは彩ちゃんもやんな
家族って我慢し合うものなんかな?」
「少なくとも私にはそうやった
あの家が嫌いで
認めてくれない母さんが嫌いで
ずっと我慢してた」
「癖になっちゃったんやな
でも彩ちゃん家族は我慢しあうものちゃうよ
安心しあうものやって思う
美優紀ちゃんのことは
お姉ちゃんに任せて」
「任せるって…いったい」
「安心して?
彩ちゃんが美優紀ちゃん守るように
私たちは彩ちゃんを守るんやから」
「岸野次の収録は?」
「今日は中止らしいで?」
「え?なんで…」
「さぁわからんけど
なんか大きな会議やって言うてた
急に入るなんておかしいもんやなぁ」
「…姉ちゃんか」
「え?」
「いやなんでもない
小学校に向かってくれ
美優紀迎えに行くから」
「いやでも小学校は
まだ…その」
「わかってる中には入らへんし
外でまっとく
変装やってするから
ええやろ?」
「はぁ…気を付けてや?
幼稚園の時より
彩ずっと売れてるんやから」
「わかった…」