「渡辺先生この間はすいませんでした」

「別に気にせんでええから」

「はい…」

「そんな風になるなら
最初から飲まんかったらよかったやん」

「お酒でも入ったら
先生少しは心開いてくれるかなって」

「悪いけど
心開く気なんかないから」

「俺、先生が好きです」

「突然なに」

「ちゃんと伝えとかないと
先生なかったことに
しそうやから」

「もう一度言うけど
君の…」

「気持ちには
答えられないですよね
分かってます
ただ俺はそれでも
先生の傍にいます」

(美優紀の傍にいるから)

「…あ」

「先生?」

「…何にもない
午後の診察あるから」

「じゃあ俺も…」

「君も診察」

「え?」

「いつまでも見てるだけじゃあかん
朱里を補佐につけるから
もしなんかあったら連絡して」

「…」

「なに?緊張?」

「じゃなくて…吉田さんと
ホンマに仲いいんやなって」

「…まぁね
そんなことどうでもいいから
患者さん待たせない」






「うぃ…疲れた」

「お疲れ山本先生」

「すいません吉田さん
助けてもらって」

「いいよ
初めてやねんから」

「渡辺先生にも
聞いてばかりで迷惑を」

「そんなことないって」

「…ふぅ」

「先輩ってホンマにカッコいいよな」

「はい」

「昔な?私が大学の先輩と
もめた時に
顔も知らんのに前に立ってかばってくれてん
この子は悪くないって」

「渡辺先生が?」

「意外やろ?今の感じやとね
でも昔はもっとフワフワしてて
よく笑ってた人やった」

「…」

「何があったかとかは言われへんけど
だから私、山本君には
感謝してるねん」

「感謝?」

「先輩のことちゃんと
理解しようとしてくれて
ありがとう」

「俺は何も…」

「ちょっと変わっちゃったけど
根は誰よりも優しいから」

「はい」



「えっと小銭…」

「なぁ」

「あ、渡辺先生タバコですか」

「まぁ…この後カルテ整理よろしく」

「わかりました」

「それと…ほれ」

「うわ」

「じゃお疲れ」

突然投げられてキャッチした
手を広げたら缶コーヒーが
振り返ると渡辺先生は
携帯を耳に当てて走っていた

「優しい人や」