「今日は外科を見てもらう」
(よっしゃ外科や)
(大本命やで)
「指導医は渡辺先生や」
「渡辺…あ」
列の前に出ると
福本先生の横に
あの時の先生がいた
「渡辺美優紀
外科じゃなく内科」
(え?)
(でも外科って)
「なぁなぁ彩」
「なんやねん上西」
「あの先生の噂知ってるか?」
「噂?」
「メス…持たないんやって」
「メスを持たない」
「おいそこ
噂間違ってんで
持たないんじゃなくて
持てないんや」
「え、あ、あの」
「私は君たちの指導をする気もない
だから菜々先生に教わればいい」
(あのでもそれじゃあ)
「私に教わって得はないと思う
いいか福本
前にも言ったが…」
「渡辺?そろそろ前に進め」
「…ッチタバコ吸ってくる」
「おい!渡辺
悪いな
口は悪いけど腕は確かやし
患者さんの評判もいいんや
ただちょっと…な
まぁいい次は整形外科や…」
(なんかさぁ
あの渡辺って先生感じ悪すぎやんな)
(なぁー明らかに俺たち
見下してたし)
(メス持てないなら
最初から内科にいろっての)
「んー…」
「どうしたん彩」
「いや…別に
コーヒー買ってくる」
あの先生悪い人なんか?
確かに冷たいけど
でも…なんか
「あ…」
自販機に行ったら
渡辺先生がいた
「お疲れ、じゃ」
「あの」
「なに?」
「何でわざと嫌われようと
したんですか?」
「は?」
「皆の前で」
「思ったことを言ったまでや
君も私に関わらんほうがええんとちゃう?
ただでさえここは人間関係
ごちゃごちゃやねん
少しでも味方作るべき」
「じゃあなんで先生は」
「私は一人でいいから」
(美優紀せんせー!)
「ん?あー小春ちゃん
どうしたん?」
(検査終わったぁ
先生遊ぼうっ!)
「ええよーほらいこ?」
(わぁーい!)
「渡辺先生!」
「…悪いけど
私に関わらんとって」
「先生…」