「こんばんわ
ほら、これ今日のご飯」

また来たこの女
毎日毎日
俺のところに来ては
餌を置いていく
暇なんか?
てか、なんで俺?
どっからどーみても
危ない犬やと思うねんけど
周りには捨てられて
人に飢えてもっと媚びるやつも
おるやんか
よー分からへん何が目的や

「おいし?
いっぱい食べてな」

そう言って頭を撫でる
撫でさすと嬉しそうにするから
仕方なく許す
あんまり好きちゃうねんけど

「今日もなぁ
上司に怒られてなぁ
ホンマについてないよなぁ」

なんの悩み相談や
俺は興味ないで

「けど、私には
君がおるもんなぁ
私のこと必要?」

不安そうな顔するなよ
まぁおらんくなると困るかな?
餌楽に入らへんくなるし
それに俺の暇つぶしもなくなる

「って…どーでもええよな」

なんでこの人は
こんなにも笑顔がぎこちないんやろ
その、上司とかいうのが嫌いなら
噛めばええのに
なんでその人とおるんやろうか

「なぁやっぱり
私に飼われてみー…」

その言葉を聞いて
急いで逃げた
路地の隙間から
彼女の様子を見ると悲しそうやった

けど、それは演技やろ?
そうやん人間は
どうせ俺の事
俺の本当の姿見たらきっと捨てる
恐れ哀れな目で俺を見るやろ
それは嫌やねん
もう、あんな想いしたくない
それに、あんな想いさせたくない
俺を拾ってくれたあの子は
俺をいっぱい愛してくれた
それは分かってる
それやのに捨てへんとアカンく
なるくらい
怖がらしたんや

「俺は一人でええねん」

風が吹くと
目のキズが疼く
思い知らされる
お前は犬ちゃう
化け物なんやって




(渡辺さん俺と付き合ってくれへん?)

「…ごめんなさい」

最悪や
経理部のイケメンに告られた
人気が高いから
また女子からのイジメがくる
めんどくさいねん
私悪くないのに好きでもない人から
告白されて勝手に僻まれて

「今日もあのわんちゃんのとこ
行こーっと」

不思議とあのわんちゃんと
いると楽になる
悩みなんか吹き飛ばされる
もっといたいのに
あの子は私に飼われるのは嫌みたい
何かあったんかなー
目のキズも気になるし




(おい、左目)

「おれはそんな名前ちゃうけど」

(お前俺の子分えらい
可愛がってくれたみたいやん)

「だったら何?」

(生きて帰れると思うなよ?)

「何?俺の事噛み殺す気?」

(そのつもりやわ)

「ふーんええよ
俺はその方が」

(舐めてんのか…やれ!)

「こいよ…」