朱里と2人病院に来た
母さんがいる
会える…けど

「恵…」

「ちょっと落ち着くわ」

「うん」

朱里は私をベンチに座らして
横で背中をさすってくれた

「恵」

「ん?」

「あのな?前に熱出したとき
恵、お母さんって
寝言言ってたで」

「…」

「夢で見るほど好きやねん
恵が好きな人やねん
だから大丈夫…」

「うん」

ゆっくり立ち上がり
お母さんの病室まで行く

「失礼し…っ」

言葉を失った
ベットの上色々な線に繋がれ
真っ白で痩せ細ったお母さん

(ご家族の方ですか?)

「あ、はい
娘です」

(そうなんですか
よかった…)

「え?」

(ずっと連絡が取れなくて
困ってたんです
でも、よかったです)

「あの、お母さんは…」

(…申し上げにくいのですが
今夜が山場と…)

「え…」

(すぐに担当医が来ると
おもうのですが…
上西さーん…娘さん
来てくれましたよー)

「ん…ん」

(意識が朦朧としてて
誰かは認識できてないんです
けど会話はできますよ
では…)

「お母さん…」

「看護師…さん
今ね、夢…見た」

「夢?」

「私の、娘がね
笑ってる夢…」

「っ…」

「私の、娘…
私のこと恨んでる、と思う
勝手に家…出て
あの子裏切ったから…
前にね、学校まで…見に行ったら
あの子…笑ってなかった…
私がもっと、あの子のこと
考えてたら…笑って、くれてた
の…」

「違う…お母さんは
悪くない
一番苦しかったのはお母さんだから」

「苦しかった…?
そうやね…あの人を
ひどい父親にさしたこと…」

「どういうこと…」

「ホンマは…あの人
恵のこと、すごい大切で…
私が、ガンで…子宮なくなったから
あの人、お父さんからの
プレッシャーで…
私達守るために…」

「お母さんどういうこと
なぁ…分からへん」

「恵…何してるんやろか」

「お母さん
私、今幸せやで
この子に出会って変わってん
見える?お母さん」

「…綺麗な人」

「やろ…大丈夫やで
私、お母さんのこと恨んでない
大丈夫やから元気になって」

「ホンマに最期なんやな…
全部夢みたいや…」

「お母さんほんまやから…
まだ逝かんとってや
話したいこといっぱいあるねん」

「…恵」

やつれきった顔で
笑顔を作ったお母さん
そしてすぐに
いろんな機械から
けたたましい警告音





お母さんは死んだ


「お母さんは何が言いたかったん
やろうか…」

「分からへんな…」

「会って意味あったやんな」

「お母さん最期笑ってたやろ?」

「そうやな、帰ろっか」

「うん…」

病室を出て廊下を歩く
チラッと受付を見たら
今、一番会わないといけない人

「…父さん」