初めて女を家にあげた
どれだけ寂しくても
イラついても
上げへんかったのに
なぜか朱里ちゃんならええかなって
思ってしまった

「お邪魔します」

「テキトーに座っといて」

そう言って
とりあえずココアを作る
さすがに何も出さへんのはあれやから

「これ、ココア」

「うんありがと」

しばらく流れた沈黙
でも苦しいものではなくて
自然と流れた感じ?
落ち着くんや
この子とおると…

「上西恵」

「ちょっと待って
フルネームやめへん?」

「あぁ」

「恵でええから」

「じゃあ恵」

「なに?」

「なんで部屋あげたん?」

この子はホンマに
確信をついてくるというか
でもそれがこの子のええとこやんな

「分からへん
ごめん、それしか
言われへん」

「そっか…」

「…あ
でも、なんとなく
朱里ちゃんならええかなって」

「…よかった」

「え?」

「少しは心開いてくれたんや」

「うん、まぁ」

「それで十分
朱里、恵のこと
傷つけたんちゃうかなって
ちょっと反省しててん
誰やって言いたくないこととか
あるのになぁーって」

「…ありがと」

「ええよっ
けどなホンマにこれだけは
言わせて?」

「ん?」

「朱里は例え貴方が犯罪者でも
例え貴方が怖い人でも
例え貴方が違う人でも
好きでいる自信ある
だから、それだけは
忘れんとって…」

「…」

「あ、ご飯作るなぁ
何がい…」

ギューーーッ

「恵…?」

「ごめん
今だけ許して…」

「うん…ええよ
いくらでも…
私はここにおる」








コンコンッ
「入れ」

「旦那様」

「なんや」

「恵様の書類です」

「またあの女か」

「里香さんは
恵様の為を思って…」

「フッ…あいつは
この家を捨てた
一人で勝手に
呑気に暮らしてる
高校生の身分で」

「お言葉を返すようですが
恵様はこの家の為に
今まで自分を殺して生きてきました
全て上西のためです
それなのに…」

「恵介のことか」

「はい…
あんまりだと思います
長年上西に仕えてきましたが
あの時ほど旦那様を
恨んだことはありません」

「ほぉ…言うようになったな
山田」

「我慢の限界もあります
お気に入らないなら
どうぞ私はお暇を…」

「いや、残念ながら
お前は恵介のお気に入り
だからなぁ…」

「っ…」

「しかし、あまり出すぎた真似は
どうなるか分かってるな
幼い頃捨てられたお前を
拾った恩忘れたわけではないやろ?」

「…失礼します」

恵様…

(菜々ちゃんっ!)
(ほら、一緒に行こっ)
(違う!菜々ちゃんは友達や)
(菜々ちゃん…一人になった)
(ごめんな菜々ちゃん)

私は恵様の笑顔が大好きです
小さい頃
親に捨てられた私を
笑顔で助けてくれたあなたが
大好きです…
お願いです
また、私のことを
笑顔で迎えに来てくれませんか?