(すごいなぁ彩ちゃん)
(さすが山本さんっ)
(ほんまにカッコイイ)
(スタイルもええもんな)
(付き合ってくれへんかなぁ)

聞きなれた言葉
何も感じない

高校は女子高にした
どこか男が怖かったんかもしれへん

パカッ…ドサドサッ

靴箱を開けると
大量に落ちる手紙
それを拾ってゴミ箱へ
ひどいって思うかな?
でも応えられへんのに
どうしたらええんやろうな

(山本はエースとして)

サッカーはなんとなく始めた
走ってれば
いろいろ考えずに済むかなって
初心者やったけど
見よう見まねでしたら
どんどんうまくなって
今じゃ誰も私を止められへん
というよりは止める気が無いねん
私にボールが渡ったら終わり
味方だってパスせんくなった
楽しくないから
けど一人だけくれたやつがおった
それは

「彩!帰ろ!」

「ん」

小笠原茉由
ムードメーカーで誰とでも
仲良くなれる
私に構わへんでええのに
ほっとかれへんとか言うて
けど、コイツとおったら
まだ楽
別に仲がいいわけちゃうけどな

「…」

「おー彩おかえり!」

「ん」

「今日の夕飯は
めっちゃ辛いカレーや!」

「ふーん」

「…はよ食べてな?」

「…」

ガチャッ

部屋に戻る
父さんの作り笑顔何度見たやろ
ほんまの笑顔はいつ見たやろ
私がそうさしてるねん
父さん最近誰かと付き合ってる
けど私がおるから
家に連れてきたりできひん
別にええのに
出ていけって言ってくれれば
血の繋がりなんてないやん

「おいしいか?」

「…ん」

「そうか…あんな彩
これ、見てくれへん?」

父さんが出した写真には
二人の女の人
お母さんと娘さんって感じか

「俺、この人と結婚しようと
思うねん
この子は娘の美優紀ちゃん」

「…」

「だから、この家で四人…」

「出ていくから」

「彩!」

「父さんもその方が楽やろ」

「そんなわけないやろ!
その方が楽やったらとっくの昔に
追い出してるわ!
彩、そろそろ信じてや
俺は同情でお前を育ててるんちゃう」

「…ごちそうさま」

「彩!」

部屋に戻って
さっき渡された写真を見る
よく見ると見覚えがあった

学校で廊下歩いてたら
私のことを周りと違う目で見てた
だから覚えてた
この子が妹になるん?
一人じゃなくなるんかな?
ハハッ…アホみたいや
そんなわけないやろ?
私はいつでも一人や

ギターを取り出して
弦に触る
昔…お父さんが、暴力を
振るう前のお父さんが
弾いていた
あの頃に戻りたいな
なんも知らずに幸せを感じてた
お父さんの仕事が上手くいかなくなって
暴力を振るい始めるのも
お母さんが私を愛してないことも
知らんかった

「ひとりぼっち…恐れずに…
生きようと…夢見てた…」

私はいつか一人じゃなくなるんやろうか
いつか…笑えるんやろうか
いつか幸せになれるんやろか…
誰か…私をここから出してください
暗くて狭くて苦しいとこらから
お願い…誰か…


私を…一人にしないで