選挙の矛盾 | 木下英範のブログ

選挙の矛盾

好感度ランキングで上位に来る芸能人は、嫌いな芸能人ランキングでも上位にきている。また、あるアンケートでは、最もすばらしい首相は小泉純一郎だという。しかし同時に最も悪影響を与えた政治家もまた小泉純一郎という結果になるのだ。


この一件だけを考えても、いかに選挙というものが矛盾に満ちているか、いかに民主主義の運営が難しいかがわかる。しかしこれより良いシステムを我々は見つけていないので、なんとか折り合いをつけて使っていかなければならないのだが。。


たとえば、
①、②、③、④という4人の投票人が、A、B、Cという3人の候補者から一人を選ぶ選挙を行うとする。結果、各人が次のように投票した。

①の投票:A
②の投票:A
③の投票:B
④の投票:C
この選挙ではA候補が当選ということになる。


次に投票システムを少し変えてみよう。今度は投票人はそれぞれ100票を持ち、それを各候補者に割り振る形で投票をすることとする。結果は以下の通り。
①A:40票、B:35票、C:25票
②A:40票、B:35票、C:25票
③B:80票、A:10票、C:10票
④C:90票、B:10票、A:0票
票を集計すると、
A:90票
B:160票
C:150票
となり、今度はB候補が当選した。


これは前の一人一票方式の結果とは異なっている。前の方式ではトップ当選だったA候補は最下位になってしまった。これはトリックでも何でもない。前者の選挙と後者の選挙で投票人の意志はまったく変わっていない。しかし選挙のやり方一つで結果は全く違う物になってしまうのだ。


どちらのやり方がいいとは一概には言えない。選挙法も国によってまちまちだ。しかしやり方によって結果が全く違った物になってしまうことを多くの人は認識していない。そして完全に民主的な社会決定方式は存在しないことが証明されている。選挙とは、民主主義とはそういう矛盾を含んだ不完全な物だと言うことをしっかりと認識した上で我々は運用していかなければならない。


<参考文献>
「理性の限界」(高橋昌一郎)