おカネの歴史② - 金属貨幣の登場 | 木下英範のブログ

おカネの歴史② - 金属貨幣の登場

金属が貨幣になるまで


貨幣として望ましいのは、
①誰もがほしいと思うもの
②集めたり分けたりして、みなが納得できる値打の大きさを表現できるもの
③持ち運びが容易で保存のできるもの
でした。最初は米や貝が使われていましたが、金属の発見により次第に金属貨幣に移行していきます。


『金属製の貨幣は、紀元前7世紀前後に中国やリディア(現在のトルコの西部)などで出現したとされています。西洋最古のコインは、紀元前670年ころ、リディアで作られたエレクトロン貨であるといわれています。また東洋では、刻印や銘のない鋤(すき)の形をした「布幣(ふへい)」が、紀元前770年ころの中国・周王朝時代に作られたとされています。』(貨幣博物館)


ここで、米や貝などの物品貨幣がどのように金貨(コイン)へと移り変わっていったか、当時の人の気持ちになって想像してみましょう。まず、金がコインとして使用されるずいぶんと前から、金の発見はあったでしょう。最初は落ちているものを誰かが見つけたのだと思います。


ちょっときれいな石だから家に持ち帰った。ずっしり重いし、磨いてみるともっときれいな色に輝いた。友達に見せるとだれもがほしがり、かなり良いものと交換できた。しばらくしてまた拾った。今度は首飾りにしてみるとなんだか女性にもモテるようだ。ずっと変色しないし、表面に絵を描くこともできる。また小さく切り分けることも可能であった。めったに落ちていない希少なものだがみんなが集めだした。


こんな感じでしょうか。ここで大事なのは、金も米や貝と同じように商品であるということです。金の使用価値がその価値の担保にされていることです。現在の紙幣のようにクレジット(信用)というものはまだ発生していません。そして金はその生産労力が多大なため(まず見つけるのが重労働)少量でも非常に高価です。先に書いた3つの貨幣に望ましい特性を高いレベルで満たしているため次第に金や銀が貨幣になっていったのでしょう。


そしてこの貨幣というものを使うと、今日とった魚を貨幣と交換(価値の交換)して、1年後に貨幣を服と交換する(価値の保存)ということが可能になったのです。また魚何匹が服何着に相当するか(価値の尺度)ということもわかりやすくなりました。
(1)「価値の交換」
(2)「価値の保存」
(3)「価値の尺度」
というおカネの3大機能を満たすようになったのです。貨幣を使うことによって、いろいろな見知らぬ人と取引ができるようになり、「経済」が本格的に動き出していきました。


エレクトロンの由来


余談ですが、世界最初の貨幣「エレクトロン貨」の名称の由来、これは発明者のギリシャ人が「エレクトロン」と呼んでいたからです。ギリシャ語でエレクトロンとは琥珀のことです。エレクトロン貨は金と銀の合金で薄いセピア色=琥珀のような色をしているところからそう呼ばれました。


一方、電子のこともエレクトロンといいます。琥珀と布をこすりつけると静電気が発生します。このことから電気のことをエレクトロン、エレクトリックと呼ぶようになりました。


また最近では電子マネー=エレクトロニックマネーが浸透してきていますね。奇しくも古代ギリシャ人が初めて作ったおカネと同じ名前なのです。電子マネーで買い物をするとき、2700年前の古代に思いをはせてみるのも一興かもしれません。あなた方が考案したものを、形は変わっても、今でも同じ概念、同じ名前で使っているよ、と。


木下英範のブログ-エレクトロン貨
   エレクトロン貨


【参考文献】

日本銀行貨幣博物館

日本銀行貨幣博物館 - 貨幣の散歩道

コインの散歩道(しらかわ ただひこ)