韓国の電子行政サービスから学ぶべきこと
世界電子政府ランキング、韓国は6位です。
ブラウン大学電子政府ランキング、1位です。
悔しいですがハッキリ言って、日本はネット分野で韓国に完敗です。しかもかなりの差がついています。
社会インフラ
・インターネットが隅々まで浸透し、2歳からネットに触れ始める
・2~8歳のネット利用率は79.5%
・ネットは社会的なインフラとなっており、街のあちこちにネット端末がある
・インターネット家電が一般化し、240万世帯に普及している
・お財布ケータイは2003年から普及している
・交通機関の料金体系が統一されており、すべて距離計算。よって他社への乗り換え料金(初乗り料金)が発生しない。
政治
選挙には早くからインターネットが解禁され、政党のホームページには動画が多用されています。
ハンナラ党HP http://www.hannara.or.kr/
国会では席に座ると自動的に液晶端末がせりあがってきます。席のボタンで投票も可能。議員の名札もすべて液晶表示です(ただしこれは乱闘時の安全を図るためという説が有効)。
新聞と放送
すべての新聞はネットでタダで公開。
朝鮮日報(日本語あり) http://www.chosun.com
東亜日報 http://www.donga.com/
中央日報(日本語あり) http://www.joins.com/
韓国放送公社(日本語あり) http://www.kbs.co.kr/
文化放送 http://www.imbc.com/
テレビを持っている放送会社は、テレビで新聞が読めます。この場合広告は動画になります(別の広告にすることで収益を稼いでいる)。また、ネットではリアルタイムエンコーディングによって今放送中の番組を見ることができます。
金融
たとえば、韓国の銀行で日本円を韓国ウォンに替えてもらうとします。このとき交渉次第でレートが変化します。
大量に両替するときはよいレートを得ることができます。金融サービスを「商品」として販売している証拠です。
金融自由化度の深さがうかがいしれます。
ネットバンキングでは認証トークンをUSBメモリに入れて持ち歩けます。出先のPCでも銀行に接続することができます。また、銀行取引をほとんどネットかATMで済ませるので、日本のように銀行の窓口で並ぶことはないそうです。
セキュリティ対策の徹底と、利便性、手数料の割安性、それに利用者の先進思考、ITスキルが浸透率を高めているのです。日本のネットバンキングは手数料が高いです。特に法人の場合はシステム利用料として結構な料金を取られます。考えてみれば、窓口業務の簡素化で銀行としては人件費が削減されているはずなのです。それなのに、リアル口座に比べてネット口座のほうが手数料が高いとはどういうことでしょうか。システム維持費>窓口人件費ということ?それならばシステム投資の失敗を喧伝しているようなものです。
電子政府
住民、不動産、自動車、企業、税金等に関する情報を共通基盤の下、各省庁で共有しています。ですから日本のように、生類を集めるため各機関を回る必要はありません。また、この情報基盤は金融機関にも接続されており、たとえば銀行で印鑑証明を参照、本人認証のための住民票確認等ができます。ちょっとしたことならば、わざわざ役所によって書類を集めてくる必要はありません。
それからすばらしいのは、ここに家庭のPCからつないで、31種類の証明書をプリンターで印刷できます。住民票なんか役所にいかなくてもいいのです。
現金領収書発行サービス。クレジットカード、または現金で買い物をした場合に、データを自動的に税務署に送って集計してくれます。年末調整時には集計結果が間違ないかどうか確認すればいいのです。日本のように領収書を集めて大事に取っておく手間はかかりません。
日本の電子政府の失敗
日本の年間IT予算は2兆円。その半分を電子政府(e-Japan)に当てています。しかしサービスは不便なままです。もしかして車輪の再発見をたくさんしていませんか。開発が終わったころにはシステムが時代遅れになっている悪循環です。
なぜ日本よりもGDPの少ない韓国でこれほどまでにIT進化が進んだか。それは財閥によるドラスティックな改革が大きいのだと思います。日本に財閥と言えるものは既に存在しないし、政府が強いイニシアティブを発揮して改革をするのも無理があると思います。しかし事例から学ぶことはできます。
お隣の韓国でこれほど進んだシステムを作る知識があるのに、それを謙虚な気持ちで素直に学ぶことをしてこなかったのが最大の失敗かもしれません。
また、我々ユーザがあまりにも保守的で神経質になり、情報が漏れたらどうするんだ、裁判だ!なんて言っていると、政府も及び腰になり、がんじがらめになった使えないシステムができあがるのです。政府にだって真面目に国民の利便性を考えている人が大半だと思います。ですから、少し挑戦を温かい目で見てあげる。一緒になってどうしたらいいか考えて目的を達成していくことが重要ではないでしょうか。
日本の行政に要望
★行政サービスについて
・住民票は自分で印刷できるようにしてください。やり方は韓国のまねをすればいいだけです。
・駅や街角にでっかい証書印刷端末を置こうとしていますが、いりますか?できればペーパーレスでデータ上で認証する仕組みにしてほしいです。
・住基カード、保険証カードは持ち歩きたくないんです。生体認証になりませんか?せめてケータイに入れてもらえませんか。
・公共料金の領収書。いらないんです。送ってこないでください。送料と紙の無駄です。ネットでログインして見れるようにしてください。そのほうが履歴も見れて便利です。
・転出転入届はネットで完結すべき。
・収入印紙は廃止していいんじゃないですか。
★税金等決済について
・ネットでログインすると支払一覧が表示され(税金、一般すべて)、払うボタンを押すと支払われる。でいいのでは?
・コンビニ収納とか払いやすくなるけど、開発コストがかかりますよ?単純に口座引き落としでいいのでは?
・電子申請は全面的に作り直さないと使う人がいませんよ。維持費ばかりかかっているならば思い切って辞めるのも勇断。
・eTaxは使いづらすぎです。根本から見直したほうがいいと思います。ブラウザで完結できませんか?クレジットカードかケータイでの個人認証を通じて法人認証できませんか?
【参考文献】
「ICTの利用で24時間行政サービスに挑戦する韓国」(廉宗淳)
- 渋谷から発信するICTの活用と都市型行政サービスのあり方 -
~情報化シンポジウム・イン・渋谷~