語録
ある地方に、怠け者の地主が住んでいた。所有している土地からは一年に五〇〇ポンドの地代を得ていたが、しだいに借金がかさんだため、土地の半分を売り、残りを働き者の農民に二十年契約で貸した。契約期限の切れるころ農民は地主の家へ行き、地代を払いながら、借地を自分に売ってくれないかと頼んだ。
「お前が土地を買うだって?」と地主は驚いたが、農民は何食わぬ顔でこう答えた。
「そうですとも。ただし値段の折り合いがつけばの話ですが」
「どうも腑に落ちないのだが・・・」と地主は続ける。
「わしは以前、お前の倍の広さの土地を持ち、地代を払う必要さえなかったのに、結局のところ暮らしは成り立たなかった。ところがおまえは、二十年もわしに地代を払い続け、しかも土地を買い取るだけの金を貯めこんだという。いったいどうなっているのだ?」
「なあにわけはありませんや。地主さまはいつもゴロ寝をして財産を食いつぶしておいでになった。だが、わしは毎日早起きして、野良仕事に打ち込んでいた。ただそれだけの違いですよ」
(以上、すべて引用)
「自助論」(サミュエル・スマイルズ)