行動派と理論派
①実践派の主張
旅行は素晴らしい。写真や百科事典では決して得られない体験が得られる。この地球にはすばらしいところがたくさんある。感動的な景色や、素晴らしい人々とのふれあいがあなたを待ってくれているのに、見ないで死ぬことはない。
今の若者は旅行に行かなくなってきているという。嘆かわしいことだ。何より景気に悪影響である。もっとエネルギッシュに働き、どんどん稼いで旅行もどんどん行く。日本で家に閉じこもっていたのでは視野が狭くなる。日本のビジネスモデルは世界のお客さんを相手に商品を売ることだ。ますますグローバル化していく世界でこのままでは日本のビジネスが危ない。どんどん外に出て世界を学ぶのだ。
家に閉じこもって、愚にもならない本やマンガばかり読んで何が楽しいのだろうか。本から得られることはない。
いくら知識を詰め込んだところで行動に移さないのでは、価値はゼロだ。時間と金の無駄。書いてあることが正しいかどうかもわからない。実際に自身の目で見て判断することが重要である。
形あるものはいつか壊れる。しかし旅行で得た思い出は消えることはない。一生残り続ける。
本当に物より思い出だと思う。
なまじ考えないことだ。考えれば考えるほど行動することに憶病になる。だいたい理論派は言い訳の天才だ。言葉ばかりで行動に移すところを見たことがない。その考えがいいと思うならば自分でやればいいのに。
潜在意識が行動に影響を及ぼすならば、行動も潜在意識に影響を及ぼす。怒った顔で心から笑うことはできない。意識して笑顔を作れば自然と心も上向いてくるというものだ。これと同じで旅行に行って実際に現地を経験することで心に変化を及ぼし、日々の思考によい効果を与える。思考は行動から生まれる。
旅先での出会いはいつも心に新鮮な風を送り込んでくれる。また誰かと行けば絆が深まることは間違いない。
五感から得たものしか脳へインプットできない。体も頭も心もいろいろな意味で刺激になるのが旅行である。
さあ、旅に出よう。
②理論派の主張
本は素晴らしい。過去から醸成されてきた貴重な知恵が詰まっている。先達が成功も失敗も体験して残してくれたのだからこれを利用しない手はない。
今の若者は本を読まないという。嘆かわしいことだ。本は最小の投資で最大の利益が得られるのに。旅行なんかに行って遊んでいてばかりでは視野が狭くなる。これからの情報化時代に武器となるのは自らの知だ。ネットや流通の発達によって知識は誰でも手に入れることができるようになった。だからこそ、さらに多くを学んで自分なりの知恵を醸成しなければならない。
詰め込み旅行の何が楽しいのか。ハードスケジュールで名所を回り、楽しむ暇もないまま写真だけを撮って帰ってくる。そして記憶にはなにも残っていない。残るのは疲労と高額のレシートだけだ。時間と金の無駄。
しっかりと吟味して自分に必要な物を買うことは一生残る。物を大事にするという喜びが生まれる。
これこそが自分投資だと思う。
誰かに聞く前に脳に汗して自分で考える。考えもしないでものをいう人がいる。深く考えないで周りに流されてばかりの人がいる。周りがやっているからと言って自分もやればいいというものではない。その行動は本当に正しいのか?ちゃんと検証したのか?軽率な行動は周りにも自分にも悪影響を及ぼす。そして失敗から自分を臆病にしてしまう。
人間は想像の中で成長することができる。頭の中でイメージすればそれがあたかも体験したかのようにニューロンにインプットされる。成功者の伝記を読んで成功者になりきれば、成功者になるための心が作られるだろう。小説を読んで人物になりきれば、人々の心のひだを知る手助けになるだろう。行動は思考が作る。
無意識はいくら学んでも自分でコントローすることはできない。しかし意識は自分でコントローすることができる。無意識に頼るのではなく、ちゃんと自分で考えて計画を立てて行動することが結局は一番の近道である。
さあ、本を読もう。
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さて、どちらの主張が正しいのでしょうか。
答え:
どちらかが正しいなんてことは言えませんね。どちらかに決めつける必要もありません。
文献を読んでから現地に出向けばいっそう楽しめるでしょうし、旅行から帰ってきてから現地のことをさらに学んでもより一層充実するでしょう。旅先に本を持っていってもいいですね。
ただ、この議論が無駄なものかというとそうではありません。議論は自分が気付かなかったことを気付かせてくれる有意義なものです。大いに議論すべきです。ただし、自分がどちらかの側にいつもいなければならないわけではありません。議論と自分の行動をまったく一緒にする必要はありません。それは自分で決めればいいことです。議論は議論。自分は自分。今日はこっち派、明日はあっち派なんてやってもいいわけです。だから誰かがいいことを言ったら素直に受け取りましょう。