脳の不思議 - 顔認識システム | 木下英範のブログ

脳の不思議 - 顔認識システム

人には当たり前にできても、コンピュータには難しい処理のひとつにパターン認識があります。その最たるものは顔認識です。


次の写真をご覧ください。


目と口が2重
(ソース:おもしろ写真集


なにかヘンですね。頭が混乱するようです。目と口が二重になっているだけなのですが、思わず自分の目をこすってしまいませんでしたか?


これが顔認識システムの影響です。顔認識のパターンに当てはめようとするのですが、雛形に合わないため
脳が混乱してしまうのですね。人は顔を物として見ることはできないのです。


人は生まれて目を開けた瞬間に3つの点(2つの点が目を、1つの点が口をあらわすような)を目で追い始めるそうです。生まれてすぐの赤ちゃんでさえ顔認識能力が備わっているのです。生まれてから2、3ヶ月過ぎる頃までにはもっとも面倒を見てくれる人(母親・父親)の顔と他人の顔を識別できるといいます。


成長するにつれて顔認識のシステムも発展してきますが、6~8歳の頃までは簡単な変装(メガネをかけたりカツラをつけたり)で簡単に騙されてしまうようです。この頃までは顔認識の多くをつかさどる右脳に障害を持っている大人と同程度の能力だそうです。つまり、うまくやれば、8歳頃までならばサンタはわが子にバレずに任務を達成できるでしょう。


不思議なことに顔を認識する能力は、11歳頃から14歳頃までの思春期に急に低下し、その間2~3年は能力の向上が見られなくなるそうです。この理由はまだわかっていません。


顔認識システムの高い性能を示す例として、次のような実験結果があります。高校時代の卒業アルバムから5人を選び、そのうちの1人は同クラスの人を混ぜます。そして5人の中から同クラスだった人の顔を1人選ぶように求めると、学校を出てから35年経った人でさえ、その90%が同級生の顔を認識することができました。その間に出会った数多くの人と混同せずに、ほぼ全員の顔をを覚えているのです。驚くべき認証システムです。


よく顔は思い出せても名前は思い出せないといいますが、特別の記憶システムを発展させてきた顔認識に比べれば名前の記憶のほうが劣っているのはあたりまえなのです。


また不思議なことに、男女ともに、女友達よりも男友達の名前のほうを2倍も多く覚えていたそうです。理由として、女性にとっては男性は肉体的にも性的にも脅威ですから、自分を守るために好き嫌いにかかわらず男性の顔をより多く覚え、男性は共同作業をする仲間として男性の顔をより多くを覚えようとするのかもしれません。もっとも近年は男性が弱体化しているので、実験結果は逆転しているかもしれませんが。


また、外人の顔は覚えづらいと言いますよね。これは、自分の人種以外の人を見るときにはその人種特有の特徴(白人ならば鼻や目の色)に集中してしまい、顔認識システムがうまく働かないことによると思われます。


ところで女性は男性の本心を見抜くのが得意ですね。顔の微妙な表情を読み取って、すぐにそれが嘘であることを見破ってしまいます。これぞスーパーコンピュータでも到底及ばない脅威の顔認識と言えそうですね。


(※この記事は2005/04/30に他ブログで執筆したものの再掲です)