インデックス投資について | 木下英範のブログ

インデックス投資について

現在、株式市場には非常に多くの、そしてさまざまな専門性を持った投資家が参加し、切磋琢磨しています。これだけ多様多数の参加者の総意が株価なわけですから、群集の叡智という観点から言っても、株価は相当に効率化されているといってよさそうです。割高銘柄や割安銘柄といった掘り出し物を見つける可能性はもはやゼロと言ってもよいと思います(小さな乖離銘柄はたくさんありますが、大きく乖離する銘柄はほとんどない、つまり、探す手間を上回る銘柄は見つからないという意味です)。

また、以前にも書きましたが、「観測のパラドックス」があるために将来を予測することは困難です。テクニカル分析であってもファンダメンタル分析であっても、他者を出し抜く突出した結果を出すことは不可能です。

ですが、非常に長期(25年以上)で見ればバブルや不況の騰落を乗り越えて、株価は安定的に上昇しています。


つまり非常に長い目でみれば、経済が持続し、価値の生産がこれからも続くことの確度が高い。個々の企業は激しく変動し、倒産もしますが、経済全体がデフォルトすることはこれからもない。したがって、現代において最も効率的で成功確率の高い投資手法は、うまく分散化されたインデックス指標への投資ということになるわけです。

ここまでは真っ当な投資指南本ならばだいたい同じ結論に達しています。大いに同意します。しかし、インデックス投資もある意味で矛盾を抱えているのです。

それはインデックス長期投資をしてほったらかしておくということは、みんながボートをこいでいるのに自分だけ腕を組んで座っているようなものだからです。あるいは、みんなで神輿を担いでいるのに自分だけ担がなくても大丈夫なことに気づいて、担いだふりをして担がないことです。ですからちょっとずるい投資といえます。

日々真剣に価値評価を行っている投資家、割安銘柄を血眼で探す投資家、そういうものの土台に乗って、楽をさせてもらっていることをしっかりと意識しなければなりません。デイトレーダーだって流動性の提供と、裁定取引によって市場の効率化に役立っています。

もし全員がインデックス投資をしたらどうなるでしょう。市場はまったく効率的ではなくなるでしょう。なにも考えずに株を買ってくれるので企業は不正をしてもばれません。貴重な資源を消費し、世の中に必要でないものを作って、赤字を出していても許されてしまいます。これでは経済は発展しません。いずれすべてがダメになるでしょう。

ですがやはり、私はインデックス長期投資を選択します。しかし、株式市場において目利きは絶対に必要なのです。インデックス投資はそれを省いて横着してやるわけですから、切磋琢磨している人たちに感謝しつつ、余った時間を社会のために役立てなくてはなりません。そこまで考えてやっと「真っ当なインデックス投資」です。

俯瞰してみると、市場「非」効率論者が市場効率論に反対し、汗水たらして市場の歪み(投資機会)を見つける行為によって、市場は効率化していく。一方、市場効率論者は市場「非」効率論者の切磋琢磨によって、養われている。という面白い構図が成り立っているわけですね。