ひたちなか市新光町の大規模商業施設集積地に隣接する県有地で、米資本の会員制量販店
「コストコ・ホールセールジャパン」がオープンすることが決まった。強大な集客力を持つ
大規模店の新たな進出を知らされた市や地元商議所などは「これ以上商業施設はいらない」
「きちんと事前協議をすべき」と不満を募らせている。

◆県有地、負債抱え処分急ぐ…市など不満

同エリアは、衣料専門店や飲食店が入る複合ショッピングモール「ファッションクルーズ」を
中心にホームセンター、映画館、書店、家電量販店が集まる北関東有数の商業地で、年間来客数は
約1000万人を誇る。

コストコは3月、隣接する県有地の約5・4ヘクタールを購入。店舗面積は約1・5ヘクタールで
来春の開店を目指す。買い物圏内に住む消費者は歓迎ムードだ。3か月に1度、埼玉県の新三郷店
まで行き食料品を買っていたという水戸市の主婦(40)は「たくさん買って、ママ友と分け合い
たい」と笑顔だ。

一方、地元商業者の表情は厳しい。ひたちなか市で精肉店を営む白土哲郎さん(53)は
「価格では太刀打ちできない。これ以上、客足が向こうに流れるのはしんどい」と打ち明ける。

地元商店主たちの思いを背に、県商工会議所連合会(会長=和田祐之介・水戸商工会議所会頭)は
3日、橋本知事に中小小売店の窮状を訴え、これ以上の大規模店誘致を控えるよう要望した。
だが、橋本知事は「茨城全体を元気にしようという発想からいくと(対応は)難しい」と答え、
まだ周辺に残る県有地の今後の売却先として大規模店も排除しない考えを示した。

知事の姿勢の背景には、2011年度末で、県や用地を取得した県土地開発公社などが抱える
3452億円に上る負債の重さがある。新光町エリアでは、県は公社の債務の金利分(累計
約9億円)を肩代わりしており、いつまでも用地を塩漬けにできないというわけだ。公社は
06年度から売却を始めており、16年3月までに残る13・8ヘクタールも処分する計画だ。

ひたちなか市の本間源基市長と東海村の村上達也村長も5月31日、同エリアの土地利用で、
地元と事前協議を行うよう橋本知事に求めた。協議は08年9月を最後に行われておらず、
県が独断で売却を進める姿勢にいらだちを示した。

事前協議なしの売却について、県ひたちなか整備課は、〈1〉企業誘致には秘密保全とスピードが
必要〈2〉市が策定した同エリアの地区計画で地元の意向は十分反映されている――と説明する。

知事との面談で事前協議の再開は決まった。だが、本間市長は「渋滞対策や環境への影響など
考えるべき問題は多い」と渋い顔で、「市内の商業施設のあり方も含め、土地利用プランなども
提案していきたい」と述べ、今後も積極的に県側に働きかけていく姿勢を見せている。