加速する円安・株高が示唆しているものはなんだろうか。緩やかなインフレを目指し、そのために日銀にも強力に協調を求める安倍政権という「ゲームチェンジャー(流れを変える人)」の登場、さらに世界景気の持ち直しという循環要因で説明されることが多い。しかし、シェールガス革命や社会の高齢化といった構造変化も見逃せない。私たちは今、良くも悪くも世界経済の潮流変化という大きな転換点に立っているのかもしれない。だとすれば、長期や短期・中期のそれぞれの変化を整理しておく必要がありそうだ。

■円安・ドル高の背景に「シェール」も
 1985年のプラザ合意を挟んでドル高からドル安へと政策転換したレーガン政権。財政再建のため「強いドル」を主張したルービン財務長官の就任をきっかけにドル安からドル高へと転じたクリントン政権。米大統領の2期目は、通貨政策が一変するという過去の事例は良く知られている。
 2020年ころに米国はサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国となり、30年ころには北米は原油輸出へと転じる――。国際エネルギー機関(IEA)は昨年11月、こんな見通しを発表し市場の関心を集めた。岩盤層に含まれるシェールオイルやシェールガスの生産を加速する米国。その影響は経済や通貨政策はもとより国家間のパワーバランスにも及ぶと言われている。もちろん、今すぐどうという材料ではないが、最近の円安・ドル高の背景にも、米国の経常収支改善や、ドルで取引される米国産燃料の増加に伴うドル需要の拡大といった観点から解説する論調が増えつつある。

2期目に入ったオバマ大統領は、足元の円安・ドル高について不気味なほど沈黙を守っている。「声には出さなくとも、通貨政策を見直すのでは」。市場にはこんなささやきが漏れる。1月下旬から2月上旬とされる一般教書演説には、これまで以上に金融市場では関心が集まるだろう。
 「シェールガス革命→米景気回復→米金利上昇」という楽観シナリオや米国の通貨政策変更の可能性を考えれば、1ドル=100円とか110円といったレベルまで円安が一段と進むことも十分に考えられる。実際、クリントン政権では97年から98年にかけ、110円台から140円台へと円は急落した。だが、15年前と現在で日本の経済・財政力は様変わりした。当面、円安は企業収益などにプラスに働いても、円が急落するようだと、先行きを楽観視ばかりはしていられないとの主張は多い。それは財政危機と資本逃避という側面からだけではない。
■日本の「三つ子の赤字」は懸念材料
 「財政赤字と最近の貿易赤字及び経常収支赤字定着の可能性の高まり。日本が『三つ子の赤字』に直面し始めているとすれば、30年の時を経て、米国と日本の立場及び国力が逆転することを日本の『赤字化』は意味している」。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の佐治信行チーフエコノミストは8日付の投資家向けリポートで、こう指摘した。労働投入量の限界と医薬品の輸入増加などといった少子高齢化要因の高まりで、「円安を喜んではいられない」という
 従来型のばらまき政策で、どこまで日本経済が復活するか、懐疑的な投資家も多い。世界経済の常識に揺らぎが出てきた時に再登場した安倍政権。投資家には、激流の中で、日本経済がどこに向かうのかを見失わない冷静さが求められている。