1980年代末のバブル期をピークに縮小が続いてきたストッキング市場が復調している。
10~20代女性の間で素足に近い色合いの商品の需要が拡大。主要メーカーの売上高が前年実績を上回り始めた。
美脚を強調したいけど素肌をさらす「ナマ足」は気恥ずかしい。ごく自然なおしゃれを安上がりにできるお得感。
さらに機能性をうたう商品の登場。K―POPブームなどを契機とするトレンドの変化に、今どきの若い女性の心理と
作り手の工夫が相まって、ストッキングは日常的なファッションの有力アイテムに変身したようだ。
■前年比1割以上の伸び続く
「薄手のタイツをください」。新宿マルイ本館(東京都新宿区)の靴下売り場では最近、若い女性のこんな問い合わせが増えている。
彼女たちのお目当ての「薄手のタイツ」とはストッキングのこと。都内の専門学校生、林貴世子さん(19)は
「友達が履いているのを見てから毎日履くようになった」と話す。
「ずっと売れなかったストッキングが十数年ぶりに上向き、一体何が起きたのかと驚いている」と話すのは福助事業運営グループ
CS事業部の姫田幸宏部長。同社のストッキング部門の売り上げは今年に入り前年比1割以上の伸びが続く。
けん引役はベージュなど薄い色合いのプレーンストッキングだ。最大手のアツギでも昨年からプレーンタイプの売上高が
前年比2桁増のペースを維持。グンゼでは若い女性に照準を合わせて2月に発売した新ブランド「ミリカ」が計画を1割以上上まわる。
日本靴下協会によると、プレーンタイプが大半を占めるパンティーストッキングの国内生産量は1989年をピークに減少が続く。
2011年は1億1936万足と最盛期の約10分の1まで落ち込んだ。それがなぜ復調しているのか。
足元のおしゃれの歴史をひもとくと、理由の一端が見える。
■バブル崩壊でストッキング不遇時代へ
ストッキング不遇の時代の始まりはバブルの崩壊。ブームだったボディコンスーツを女性たちが着なくなりカジュアルな服装へシフト。
職場でも女性社員の制服を多くの企業が廃止し、パンツルックなども一般的に。ストッキングを必要とするシーンが大幅に減った。
決定打は1995年のナマ足ブームだ。女性が素足で外出や通勤をするようになり、女子高生の間ではルーズソックスが流行。
冬でもナマ足が当たり前になった。
当時は86年の男女雇用機会均等法施行からほぼ10年たち、女性の社会進出が進んだ時期。
「自信をつけた女性たちが脱毛やエステで手入れした脚を見せ始めた」(ファッションジャーナリストの藤岡篤子さん)。
一方、ストッキングは職場など「オン」のイメージが強まり、「オフ」のファッションでは敬遠された。
その後、網タイツや柄タイツ、レギンス、トレンカと足元のおしゃれの流行が巡る中でも「マイナスのオーラがついた」(アツギ) ストッキングは顧みられなかった。
■素足風の美脚が脚光
ただ、レギンスなどの流行に伴い、その上に着る丈の短いワンピースやショートパンツが普及。これがストッキング復活の伏線となる。
2010年前後にKARAや少女時代など素足風の美脚を強調するK―POPアイドルが台頭。これにあこがれる若い女性が増えるのと同時に、
レギンスなどで脚を隠すのが「ダサい」という意識が芽生える。都内在住の女性会社員(22)は「レギンスは彼氏受けも悪い」と話す。
膨らむ「ショートパンツで脚を見せたい」という願望。だが「素足を見せるのは恥ずかしい」(林さん)。
今の若年層が思春期の頃は、大人がレギンスなどで素足を「覆う」ファッションの全盛期。
「何も脚にまとわないことへの不安感もあるのでは」とグンゼレッグウエア事業本部レディス企画課の宮城敬課長。
こうした女性たちが、素足風に見えるストッキングに着目したとみる。
■商品特性もニーズにはまる
若年層にストッキングが見直された理由は流行の変遷だけではない。商品特性も今どきのニーズにピタリとはまった。
ファストファッションになじんだ今の10~20代が好むのは手軽でラクなおしゃれ。
着脱が手軽なストッキングは「つけまつげやウイッグなど簡単に変身できるグッズの延長線上で履いている」とニッセイ基礎研究所
生活研究部門の久我尚子研究員は分析する。プレーンなストッキングは最近主流の自然なメークとも合致する。
また、足を引き締める着圧タイプや、透明感のある素材で肌や脚の形をきれいに見せるタイプなど、美脚機能が向上した商品も
ここ数年の間に相次ぎ登場した。
値ごろ感もポイントだ。パンティーストッキングは物価の優等生。「68年の発売当時から1足売り350~500円という水準は変わらない」(アツギ)。
4足1000円といった低価格品も普及したが、メーカー各社は需要縮小の中で、抗菌消臭加工や紫外線(UV)カットなどの機能を追加しながらも
値上げせずにきた。これが今、追い風となっている。
売り手の仕掛けも奏功した。アツギが昨年「プレーンストッキングの逆襲。」というコピーで発売し、素肌感覚の色合いや着圧など特徴を持たせた
11種類を展開する「アスティーグ」。百貨店や量販店に4種類以上を陳列するよう強気の営業を展開して売り場を広げた。
広告にはモデルのTAOさんを起用し、ファッショナブルな衣装とのコーディネートを打ち出した。グンゼの「ミリカ」も女優の武井咲さんをモデルに使い
ファッション性をアピールする。
かつての「オン」のイメージを脱し、日常的なおしゃれアイテムに変身したストッキングには、継続的な需要拡大への期待が膨らむ。
「よりナチュラルに見える商品の開発や機能の向上が進めば、ナマ足世代の30代以上もストッキングを見直すのでは」。藤岡さんはこう指摘する。
