衆院の幹部職員が電話で怒りに声を震わせた。

「国会議員が、衆院の中庭の池でニシキゴイを飼うことに固執して困っている。国民の理解が得られるはずがない」

国会では、参院中庭の池でニシキゴイを飼っているが、衆院では実現していなかった。観賞用のニシキゴイは高額。
私鉄に無料乗車できる国会議員用パスを巡り、発行元の日本民営鉄道協会が廃止を求めていたこともあり、
幹部職員はコイ購入で「税金の無駄遣い」と批判を浴びることを危惧したのだ。

また、職員にとってはコイの世話という新しい“業務”が増えるため、快く思わないのは当然ともいえる。

結局、衆院議院運営委員会の小平忠正委員長(民主)が全日本錦鯉振興会に働きかけ、30匹が無料で
「寄贈」されることになった。実際に購入したら「1匹当たりの価格は10万円前後」(民主幹部)もかかる。

そして5月31日。衆院の議院運営委の与野党委員らが満面の笑みで中庭にある池にニシキゴイを放した。

ただ、問題は残る。衆院は昨年11月、池を含めた外壁のリニューアル工事を実施。洗浄に使った有害な薬品が
残っている可能性があるため、池の水質に問題が生じる可能性があった。このため、衆院事務局はニシキゴイを
放す前に金魚10匹を入れて生存可能かどうか1週間チェックしたほどだ。

結果、金魚は3匹死んだが水質検査はパス。だが、全日本錦鯉振興会関係者は「そもそも飼育に必要な水の濾過装置
が池にはないし、池の深さが数十センチしかない。ニシキゴイを飼うには浅すぎる。飛び出る可能性がある」と危惧する。

コイが勢いあまって飛び出たらどうするのか。一時期、「衛視がコイの見張りをしている」との噂が国会内を駆け巡った。
担当職員に話を聞くと、池周辺にいる衛視が飛び出たコイを見つけ、別のコイ担当職員に連絡。網で“救助”することになるという。

衛視は本来、国会議員や見学者の出入りをチェックする警備を担当している。「衛視の仕事が魚の監視か」と職員のぼやきも聞こえてきた。

6月は消費増税を柱とする税と社会保障の一体改革関連法案を巡る与野党の攻防が激化。国会内で延々と続く修正協議や法案成立に向けた
駆け引きを取材していると、ついニシキゴイの様子が気になり、廊下の窓から中庭の池に目をやることが多かった。おかげで、国会議員から
話を聞きそびれ、再質問して嫌な顔されたこともあった。