日米欧4カ国の中銀は2008年以降、量的緩和や国債買い入れなどを通じてなどバランスシートを総額6兆ドル以上増やしたが、市場では欧州債務危機などを背景に今後も追加緩和が繰り返され、これまで独立性を維持してきた中銀と政府の関係に変化が生じるのではないかとの見方が出ている。
米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(英中央銀行)、日銀の「4大中銀」は、すべて次回の政策決定会合で追加緩和の是非を議論するとみられている。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのゲイリー・ベイカー氏は「市場は何があっても量的緩和があるというムードだ」と指摘。同社の最新のファンドマネジャー調査によると、回答者の4分の3はECBが10月まで追加の流動性供給を実施すると予想。FRBについても約半数が10月までの追加措置を予想している。
日銀は今年すでに追加緩和を決定。英中銀でもハト派のポーゼン委員が今週、国債とともに中小企業向けローンを買い取るべきだと主張している。HSBCによると、4大中銀のバランスシートは過去4年間で3倍以上に拡大、計9兆ドルに達したが、自律的な景気回復には至っていない。今後の課題は、どこまで副作用を出さずに追加緩和を継続できるかだろう。中銀は当面、金融政策の運営に加え、国債管理や金融・銀行システムの安定でも役割を期待されるとみられている。
市場では、中銀が政府の「エージェント(被使用者)」として市場の安定や銀行監督で行動する場面が増えているとの懸念が浮上。景気回復時の緩和解除は技術的に難しくなく、特に大きな問題にはならないが、政府から引き続き財政赤字のファイナンスを求められた場合に中銀が拒否できるかが懸念要因だとの指摘が出ている。
国際決済銀行(BIS)は報告書で「金融政策と政府の債務管理の境界が急速にあいまいになってきている。政策交流の変化は理解しがたい」と指摘。HSBCのエコノミスト、カレン・ウォード、サイモン・ウェルズ両氏も、量的緩和で最も影響を受けたのは中銀の独立性だと指摘。財政赤字が解消されず経済成長が阻害されれば、高い代償を払い続けることになるとの懸念を示した。両氏は「中銀の独立性が支持された全盛期は終わりに近づきつつある」と分析している。
ヘッジファンド・マネジャーのスティーブン・ジェン氏は、量的緩和について、短期的なメリットよりも、財政健全化の遅れなどデメリットのほうが大きいと指摘。「ある時点で利益とコストのバランスが逆転するだろう」との見方を示した。