街を歩きながらスマートフォンをチェックすると、無線LANのアクセスポイント(AP)
を検知する機会が増えている。携帯電話事業者が、逼迫する3G回線からデータ通信を
オフロード(分散)すべく、公衆無線LANのAPを大量に新設しているためだ(図1)。
ユーザーにとっては歓迎すべきことに思えるが、実は無線LANの通信環境は急速に“汚れて”いる。
背景にあるのは、無線LANで主に使われている2.4GHz帯の混雑だ。スマートフォンを
はじめ、多くの無線LAN対応機器はIEEE 802.11b/g/n方式に対応している。2.4GHz帯の
電波を14チャンネルに分けて通信に使うが、各チャンネルの周波数は重なっているため、
安定的に通信できるのは実質3チャンネル分しかない。これに対し、都市部ではAPやモバ
イルルーターなどで数十局の親機が検出される場合すらある(図2)
無線LANには、同一の周波数で通信しているほかの無線LANの電波を検出し、空くのを
待ってから通信を始める「CSMA/CA」という干渉回避技術がある。このため完全な通信
不能にはならないが、待ち時間の発生により通信速度は低下する。また、2.4GHz帯は電子
レンジやコードレス電話など無線LAN以外の電波も利用しており、これらとの干渉も通信
速度の低下につながる。「『ある時期から急に無線LANがつながらなくなった』とユーザー
から問い合わせがあり、調べたところ、その時期に購入した無線対応のオーディオ機器が
原因だった」(NECアクセステクニカ)というケースがある。
図1 東京都心の大型書店に携帯電話事業者などが設置した公衆無線LANのアクセスポイント
(AP)。スマートフォンの普及に伴い混雑が激しい3G回線の代替として急ピッチで整備
されている。場所によってはAPが乱立し、都市部では無数のAPが見つかる 。

図2 多くの無線LANが使う2.4GHz帯の電波は、無線LAN以外の電波も含めて自由に使える
周波数帯。最近は利用機器が増えており干渉の可能性も増している。公衆無線LANでは、
APから基幹網への「バックホール回線」が細いなどの原因もある 。
