山形大学は大手化学メーカーなどと連携し、次世代リチウムイオン電池の開発に乗り出す。
まず主要構成部材であるセパレーターの機能性向上に照準を絞り、電池の長寿命化や高出力化を目指す。
宇部興産時代から国内外で知られた吉武秀哉教授を軸に研究陣も拡充。総額12億円を投じて山形県米沢市内に新たな研究開発拠点を建設する。

 セパレーターは正極、負極、電解液と並ぶ基本部材で、主に正負両極を隔離する機能を担う。
次世代電池の開発は正負極の素材や電解液への添加剤の研究が主流だが、
吉武教授らは「セパレーターの構造や機能を工夫することで電池性能を高められるのでは」と発想。
有機半導体(導電性化合物)を塗布すれば長寿命化などにつながることを実証し、既に基礎技術について特許出願した。

 同大は工業団地の米沢オフィス・アルカディア(米沢市)内に「蓄電デバイス研究開発センター」(仮称)を建設する。
用地約4700平方メートルは米沢市が無償提供し、来夏をメドに稼働する。
経済産業省のイノベーション拠点立地推進事業に採択され、約6億6000万円の補助金交付が決定。
山形大の結城章夫学長らが8日に発表する。

 同センターではセパレーターのベースとなる多孔質膜が有機半導体の塗布・乾燥後にも安定した特性が得られるかどうか
連続生産プロセスで繰り返し実証する。
電池寿命は従来に比べ3割以上延ばすほか、航空宇宙分野などでの蓄電利用を想定して
「性能劣化が10年間で15%以内」となる新型電池の開発を目指す。

 実証実験にはセパレーター用樹脂原料大手のほか、セパレーターや電池関連のメーカーなど数社が加わる見込み。
原料供給から最終製品製造まで有力企業が連携し、早ければ2016年をメドに量産化に踏み切る。

 吉武教授は宇部興産で長年、リチウムイオン電池開発のリーダー役として活躍。
特に機能性電解液では世界的な第一人者で、電気化学会技術賞・棚橋賞など受賞歴も多い。
昨年の移籍以降、山形大は同電池の開発を重視。民間企業や他大学から相次ぎ人材を招き、研究陣は十数人に拡充した。

 同大は昨春に「有機エレクトロニクス研究センター」を開設。
城戸淳二教授を核とした有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)をはじめ、有機太陽電池、有機半導体の研究開発に取り組んでいる。
今後はリチウムイオン電池を第4の柱と位置付け、実用化を急ぐ。