製造業として過去最大規模となった半導体大手エルピーダメモリの破綻劇は、東証1部上場の有名企業も“突然死”するリスクを取引先や投資家に思い知らせた。ギリシャ問題再燃やイラン情勢など不透明要因も多い中、ほかに危ない企業はないのか。参考になるのが企業の信用度を示す「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」の値だ。主要企業のCDS参考値(別表)をみると、市場が「倒産危険度」をどう判断しているかが浮かび上がる。
CDS値は倒産リスクが高いとみなされる企業ほど大きくなり、「一般に200ベーシスポイント(bp)を超えると要注意、400bpを突破すると警戒が強まる。700bp突破で危険水域になり、1000bpを超えると破綻が意識される」と市場関係者。
そこで、東京金融取引所が毎日公表している国内主要企業のCDS値をみてみると、6日夕の時点で最も高いのが東京電力で、500bp台を上回っている。
東電のCDSは国有化議論が浮上した昨年10月には1500bpに迫る水準まで急上昇していた。当時に比べると、このところは大幅に下がっているが、「国有化の際の議決権比率をめぐって政府側との思惑が食い違っており、“不測の事態”に対する警戒感は消えない」(銀行系証券アナリスト)。
500bpまで上昇したのが海運大手の川崎汽船。昨年7月ごろまでは100台前半で推移していたが、業績見通しの下方修正を繰り返したことでCDS値も急上昇。「2月に格付けを引き下げたことも悪材料。今後、投資不適格級まで格下げされるのではという懸念が市場で広がった」(同)とみる。
証券大手の野村ホールディングスも昨年後半から急上昇し、1月には一時350bpを突破、その後も200台後半で高止まりしている。
同社は昨年10~12月期決算では、子会社を通じて保有していたファミレス「すかいらーく」株の売却益が貢献して最終黒字に転換、国内証券子会社の野村証券では営業経験が豊富な永井浩二副社長(53)が社長に就任する。ただ、海外部門では赤字が続いており、米格付け会社が格下げ方向で見直す方向を示すなど課題も多い。
国内電機メーカーでは、NECのCDS値が200bpを超えている。携帯電話事業などの不振で通期業績見通しを1000億円の赤字に下方修正、1万人規模のリストラを打ち出すなど状況は厳しい。
ソニーは通期で2200億円、シャープは2900億円と巨額赤字の見通しだ。それぞれ主力のテレビ事業が低迷し、CDSも100台後半と上昇基調だ。
ただ、実際に法的整理となったケースをみると、日本航空の破綻直前のCDS値は3000~5000bp台、武富士は5000~6000bpまで上昇していた。エルピーダのCDS値は2009年1月に同取引所の公表銘柄から削除されたが、「破綻直前には2000bp近辺の気配値が出ていた」(市場関係者)。
現状では、国内企業は総じて落ち着いた水準にあるといえるが、クレディ・スイス証券の白川浩道チーフ・エコノミストは「ギリシャ・リスクは再燃しており、イラン問題も地政学的リスクは着実に高まっている。春以降の景気のダウンサイド・リスクには十分な警戒が必要」と指摘する。
CDS市場も嵐の前の静けさか。
■CDS(クレジット・デフォルト・スワップ) 金融派生商品(デリバティブ)の一種で、企業などの倒産や債務不履行(デフォルト)の際に債権を肩代わりする保険の性質を持つ。取引先企業や社債の保有者が万一に備えて購入したり、「保険金」目当てで取引する投資家もいる。
「保険料」にあたるCDS値はベーシスポイント(bp)で示され、100bpは上乗せ金利1%分に相当する。たとえば、CDS値100bpの企業が発行する1億円の社債に保険をかけるには、保険料は年100万円という計算になる。
