昨年3月の東日本大震災以降、富士山で異常現象が続いている。春の到来を告げる
残雪の模様「農鳥(のうとり)」が厳冬のこの時期に出現。昨年夏には、富士山麓の
富士河口湖町で普段はみられない幻の湖が姿を現し、富士宮市では、異常な湧き水被害
が頻発している。富士山の火山活動への影響が懸念される中、相次ぐ異変に地元住民は
不安を募らせている。
富士山の北西斜面の8合目付近に羽ばたく鳥のような残雪の模様が現れたのは
1月31日。「農鳥」と呼ばれる毎年恒例の自然現象だが、地元住民の間では、
「よくないことが起こる前触れではないのか」と不安の声が挙がっている。
「例年、雪解けを迎える5月中旬から6月ごろにかけて現れる現象です。厳冬期に起
こるのは非常に珍しいため、富士山の異変に結びつけて心配に思う人もいるようです」
(山梨県富士吉田市富士山課の担当者)
富士山周辺でみられる異常現象はこれだけではない。
「昨年の夏ごろから、台所や居間の床下から噴出する湧き水に悩まされている。
ポンプで排水しなければ追いつかない水量で、今も被害は続いています」と訴えるの
は、富士宮市の淀師地区に住む主婦(70)。
富士宮市によると、同様の湧水被害が出始めたのは、昨年9月初旬。
「この年は、5月から夏にかけて例年以上に大量の雨が降った。加えて、8月、9月
と連続して台風が来襲。短期間に降った大雨との関係が疑われますが、はっきりした
原因はわかっていません」(同市秘書広報課)
井戸から水が噴き出すなど、同地区などの99カ所で同様の現象が確認されたという。
さらに、富士五湖を抱える富士河口湖町では、昨年9月ごろに幻の湖が出現し、注目
を集めた。「富士五湖の1つ、精進湖の近くにあって地元では『赤池』と呼ばれていま
す。普段は枯渇しているのですが、精進湖の増水に伴って突然現れる不思議な湖です。
2カ月ほどで消えましたが、一時的に富士六湖になった。今回出現したのは7年ぶりの
ことです」(同町の住民)。
「赤池」は、直径50メートルほどの小さな湖。「はっきりした由来は不明だが、真
っ赤に焼けた溶岩で湖が赤色に染まった」(別の住民)という言い伝えから、その名が
付けられたという。過去にも何度か姿を現しているが、原因は何なのか。
山梨県環境科学研究所の研究員、内山高氏は「湧水被害と同じく、この地域の大量
降雨が原因と考えられます。精進湖と赤池は地下でつながっており、精進湖に降った雨
水が地中に浸透しきれず、赤池に流れ込んだために起きたものと思われます」と話す。
一連の異常現象は地震や噴火との直接の関連はないようだが、内山氏は「山中湖付近
でも湧水で道路が冠水したと聞いています。これほど大規模な被害が出るのは異例のこ
と。大量の雨水が地中に浸透することで地盤に悪影響を及ぼしている可能性は十分あり
ます」と危惧する。