東芝が2011年7月に竣工した新製造棟「Fab5」。ポストNANDフラッシュ・メモリの旗艦工場とする計画だ。
2011年の半導体メモリ業界では、既存メモリの微細化限界後を見据えた新メモリ技術が
話題をさらった。ポストNANDフラッシュ・メモリ世代に向けた3次元NANDフラッシュ・メモリや、
DRAMの代替を狙うスピン注入磁化反転型MRAM(STT-MRAM)などである。2013~
2014年の実用化を見据えたこれらの技術の開発が、2012年には佳境を迎えそうだ。
2011年、NANDフラッシュ・メモリでは微細化競争が1Xnm世代に突入した。先陣を切った
のは東芝である。同年7月に19nm世代品の量産を開始した(Tech-On!関連記事1)。これ
とほぼ同じ技術世代に当たる2Xnm世代品の量産を同年9月に韓国Samsung Electronics
社が開始し(同2)、同年12月には米Micron Technology社と米Intel社の連合が20nm世代
品の量産を始めた(同3)。韓国Hynix Semiconductor社も、20nm世代品の量産を立ち上げ
中である。
NANDフラッシュ・メモリの微細化はどこまで続くのか。この問いに対して踏み込んだ発言を
したのが、東芝 代表執行役社長の佐々木則夫氏である。2011年5月24日に開催した経営
方針説明会において、「19nmの次の1Ynm、さらにその先の1Znmぐらいまではほぼメドが付いて
いる。ただし、その後は定かではない」と語った(Tech-On!関連記事4)。同氏の見方は、メモリ・
メーカー各社にほぼ共通するとみられる。すなわち、2013年ごろに各社が量産を始める1Znm
世代で、NANDフラッシュ・メモリの微細化は終焉を迎えるとの見方が強まっている。
この技術限界を乗り越えるために、各社がここに来て開発を加速させているのが、メモリ・セルを
3次元方向に多段積層して大容量化と低コスト化を実現する、3次元NANDフラッシュ・メモリ
である。東芝が開発を進める「BiCS(Bit Cost Scalable)」や、Samsung社が手掛ける「TCAT
(Terabit Cell Array Transistor)」などの技術候補がある。東芝は2011年7月に催したNAND
フラッシュ・メモリの新製造棟の竣工式において、2013年をメドに3次元NANDフラッシュ・メモリの
量産を開始する意向を明らかにした(Tech-On!関連記事5)。“ヨコからタテへ”という技術進化
のパラダイムシフトが、NANDフラッシュ・メモリでは2013年ごろに始まる見通しである。
DRAMでは、Samsung社が業界に先駆けて2011年9月に2Xnm世代品の量産を開始した。
エルピーダメモリも同じ時期に25nm世代品を発表、同年12月から量産を始めると宣言した
(Tech-On!関連記事6)。DRAMについては、1Xnm世代への微細化の技術ハードルが非常に
高いとみる指摘が多い。こうした技術限界を見据え、ここに来てSi貫通ビア(thorough silicon
via:TSV)を用いたDRAMの大容量化や高速化が実用化に向けて動き始めた。2011年12月
には、米IBM社とMicron社が共同で、DRAMをTSVで接続した「Hybrid Memory Cube」
(HMC)の量産を始めると発表した(同7)。
こうした動きと並行して、ポストDRAM世代をにらむ新メモリの開発が活況を呈している。この
うち、書き換え回数が事実上無制限に近いことから、DRAM代替を狙える唯一のメモリとの呼び
声が高いのが、STT-MRAMである。従来のMRAMの書き換え手法を一変した、磁気ベースの
不揮発性メモリである。
STT-MRAMについても、2011年の話題の中心に存在したのは東芝だった。2011年7月、
NANDフラッシュ・メモリでは競合関係にあるHynix社と、STT-MRAMの共同開発を手掛ける
ことで合意した(Tech-On!関連記事8)。東芝はまずは2014年ごろをメドに、DRAMとNAND
フラッシュ・メモリの動作速度の差を埋めるストレージ・クラス・メモリとしてSTT-MRAMを実用化
する考え。ゆくゆくはDRAMの代替を目指す狙いである。
東芝とHynix社の発表から間もない2011年8月には、STT-MRAM技術のIPを多数保有する
とされる米Grandis社を、Samsung社が買収することが明らかになった(同9)。Samsung社、
東芝、Hynix社というメモリ市場で高いシェアを持つ大手3社が開発に本腰を入れたことで、
STT-MRAMへの注目度は一挙に高まっている。どのメーカーがこのメモリをいち早く実用化し、
ポストDRAM世代への先鞭を付けるのか、今後2~3年の取り組みが勝負を分けそうだ。