経済協力開発機構(OECD)は28日に公表した最新の経済見通し(エコノミック・アウトルック)のなかで、ユーロ圏債務危機は世界経済に対する最大の脅威に発展し、ユーロ圏の崩壊は今や排除できなくなっているとの警告を発した。
 そのうえでユーロ圏は緩やかなリセッション(景気後退)局面に入ったとの認識を示し、政策担当者が先手を打って断固とした対策を打ち出さない限り、状況は一段と悪化する恐れがあるとの懸念を示した。

 これに関連しOECDの首席エコノミスト、ピエール・カルロ・パドアン氏はロイターのインタビューで「ユーロに対するリスクは存在する。これを否定することはできない」と発言。ただ「このリスクを回避できる可能性もある」とも述べた。 

 OECDは、ユーロ圏債務危機に対し決定的な対策が打ち出されず、米国で財政赤字削減策で合意できず大幅な歳出削減が自動的に実施されるという最悪のシナリオが実現した場合、世界経済に破壊的な下向き圧力をかける恐れがあると警告した。

 そのうえで、欧州ではユーロ圏首脳が決定的な対策を打ち出せないでいるなか、ECBだけが債務危機を食い止めることが可能で、米国では連邦準備理事会(FRB)がとり得る手段は残り少なくなっていると指摘。

 パドアン氏は記者会見で「政策は依然として後手に回っており、こうした状況はもはや容認できない」としたうえで「残された時間は少なくなってきている。効果的に対応する機会を逃すたびに、ポジティブな結果を得るためのコストが上昇している」と警告。政策担当者が信頼ある対策を打ち出せないでいることで、家計、および企業部門の信頼感が損なわれ、金融市場の不安定性が高まっていると指摘した。 

 OECDはまた、主要な新興国では成長の足取りは確かなものになっているものの、世界貿易の停滞は中国の生産活動に対する足かせとなる恐れがあると指摘した。

 OECDは世界経済の成長率は2012年は3.4%と、2011年予想の3.8%から減速するとの見方を示し、5月公表の前回見通しから下方修正した。前回見通しは2011年が4.2%、2012年が4.6%だった。
ユーロ圏の2012年の成長率見通しは0.2%とし、前回見通しの2.0%から大幅に下方修正。「ユーロ圏危機は、国債の持続可能性に関する懸念が広い範囲に拡大しているため、現時点で世界経済に対する主要なリスクとなっている」と指摘した。

 ただ、ユーロ加盟国のデフォルト(債務不履行)や、大規模な金融機関の破たんなど、経済に深刻な影響を及ぼす事態を回避することができた場合、世界経済は2012年中には再び成長を始めるとの見方を示した。

 ユーロ圏危機に関してパドアン氏はロイターとのインタビューで、「現在、危機は波及している。影響はドイツにも及んでいるようにみえる」と指摘。最大の優先事項は危機の波及を食い止めることで「ECBのみが唯一波及を食い止めることができる」との考えを示し、ECBに対し、危機の沈静化に向けユーロ加盟国の国債利回りの上昇に歯止めをかけることにコミットするよう呼びかけた。 

 パドアン氏は米国については、議会が財政赤字削減策で合意できた場合、米経済成長率は2011年は1.7%、2012年は2.0%になると予想。OECDは5月の前回見通しでは、2011年は2.6%、2012年は3.1%としていた。 

 OECDは中国の成長率については、世界貿易の伸び率が減速すると予想されるなか、2012年は8.5%と、2011年予想の9.3%から鈍化すると見通しを示した。OECDは世界貿易の伸び率は、2011年見通しの6.7%から2012年は4.8%に減速すると予想している。 

 欧州最大の経済規模を持つドイツに関しては、すでに緩やかな景気後退局面に入っているとの見方を示したうえで、2012年の成長率は0.6%と、2011年予想の3.0%から大幅に減速するとの見通しを示した。 

 日本については、2011年は東日本大震災の影響で0.3%のマイナス成長に陥るとみられるものの、2012年は2.0%とプラス成長に戻るとの予想を示した。