最新の研究によれば、あくびには頭をカッカさせずに済む効能があるかもしれないという。冷静さを
意味する比喩表現ではなく、まさしく文字通りの意味でだ。さらに今回の研究結果は、不眠症や
片頭痛、てんかん病の患者にとっても幾ばくかの光明をもたらし得る内容だ。
あくびが出るのは脳を冷やすため?
これまであくびに関しては、疲労から酸素不足まで、さまざまな理由付けが科学者によってなされて
きたが、詳細な調査を行った者は誰もいなかった。「人間を月にだって送れるというのに、あくびがど
んな役割を果たしているのか、われわれは理解していない」とメリーランド大学歯学部のゲイリー・
ハック氏は話す。
今回ハック氏はプリンストン大学のアンドリュー・ギャラップ氏との共同研究で、あくびによって上顎洞
(副鼻腔の1つ)の仕切り壁が動いて送風機のように拡大・縮小し、脳に空気を送り込んで温度を
下げるという理論を発表した。
ハック氏によると人間の脳は、ちょうどコンピューターのように温度に対して非常に敏感で、効率よく
機能するには低い温度を保たなければならないという。今回の研究は、ハック氏が以前集めたデータ
をギャラップ氏のデータと組み合わせている。
▼副鼻腔の役割とは?
両氏の研究は、あくびの謎を解く鍵を示すだけでなく、なぜ副鼻腔が存在するのか、その理由も
解き明かす可能性を持つものだ。これまで副鼻腔の存在理由については、明解な答えが見つ
かっていなかった。
今回の研究結果についてハック氏は、「あくび・副鼻腔換気・脳の冷却の3つがとても簡潔にまと
まった統一理論だ」と語った。
「正体があまり明確ではない2つ(あくびと副鼻腔)が、直接関係するかもしれないというこの仮説は、
個人的にとても興味を覚える」と耳鼻咽喉科医ライアン・スーズ氏は話す。同氏はピッツバーグ大学
医療センターの睡眠外科医局長でもある。
▼解剖から得たヒント
ハック氏のチームは2002年に死体解剖を行い、副鼻腔の1つである上顎洞の仕切り壁が、多くの
医学書にある説明よりもかなり薄く、柔軟性を持っていることを発見した。
チームは、あごを動かした際に上顎洞の仕切り壁がたわみ、副鼻腔内の換気を行うと仮定した。
「あくびは過度に大きな顎の運動で、これまで説明されていない人体のポンプ活動に何らかの役割を
持つだろうという点から、常に上顎洞のことが頭にあった」とハック氏は説明する。
その後ハック氏は、プリンストン大学のギャラップ氏が書いた博士論文に出会う。ギャラップ氏は
2007年に、あくびの役割は脳の冷却にあるとの理論を初めて提唱した。
以来ギャラップ氏は、動物(その多くがあくびをする)と人間の両方で持論の検証を進めてきた。
例えば、ネズミの脳にセンサーを埋め込み、あくびの前と最中とその後で、脳の温度がどのように
変化したか記録するといった研究だ。
ギャラップ氏のグループは、あくびの直前に脳の温度が急上昇し、それから温度が降下し始めて、
最終的にはあくび前の脳温度に急降下することを発見した。