中国の李鵬元首相が、首相在任時の1994年にオーストラリアのハワード首相(当時)との会談の中で日本のことが話題になったとき、「今の日本の繁栄は一時的なものであだ花です。その繁栄を作ってきた日本人がもうすぐこの世からいなくなりますから、20年もしたら国として存在していないのではないでしょうか」と述べた話はよく知られています。といっても、そのことは日本の新聞では全く報道されなかったのです。オーストラリアの新聞に載った記事を見て、一部の雑誌がそのことを報じましたが、わが国政府が当時の李鵬首相や中国に抗議したという話は聞きません。
日本の新聞がそんな不穏当な発言を記事にしなかったこと、何よりも日本政府がそのことを問題にしなかったこと、そこにこの国の危うさがあるのです。もし日本の首相が公の席で、例えばお隣の韓国や中国に対して「あの国はそのうちなくなるだろう」という発言をしたと考えてみてください。両国の政府やマスコミは大問題にするでしょう。そして、「発言を取り消せ」と猛烈に抗議してくるはずです。それが国としての正常な反応なのです。このことを見ても、すでに日本の政府とマスコミが麻痺状態にあることがわかります。
さらに、私たち国民もそのような情報に触れていませんし、また関心を持たない人が多いと思われます。ですから、ここで政府の弱腰の対応に抗議しているわけではありません。政治はそのときの国民の意識を反映すると言いますから、もとを正せば日本国民そのものがのんびりしているとも言えます。
ここで考えないといけないのは、李鵬元首相は何を根拠にそのような発言をしたのかということです。外国の首相との首脳会談の中で、1つ間違えば大問題になるようなことをさらりと言ってのけるにはそれなりの根拠があるはずです。
それは一口に言えば、この国の、特に若い世代に「自分の国をよくする」という意識をなくしている人が多くなっていると見られているからでしょう。いまや「愛国心」という言葉を使うことさえタブー視されるようなおかしな国になっているのです