泣きっ面に蜂(はち)――そう思わせるようなアナリストの厳しい評価がソニー<6758>に
向けられている。10月4日、株は1,370円まで下落。1978年(昭和53年)10月以来、
33年ぶりに1,400円台を割った。円高などの逆風に押され続け、2月に付けた年初来高値
3,105円からの下落率は55%。追い打ちを掛けるように、その2日後、野村証券とメリルリン
チ日本証券がソニーの投資判断をそろって引き下げた。
■「いばらの道」
11日付の株式新聞は、「野村証の資料では赤字続きのテレビ事業の見通しについて『
いばらの道』と表現」と1面で報じた。ソニー創業者の一人、盛田昭夫(1921~99)が社長
、会長時代にこの言葉を耳にしたら、「今に始まったことではない。ソニーの歩みそのもの
が、いばらの道だった」と、めりはりの利いた口調で切り返したに違いない。
「盛田イズム」の真骨頂とも言える文章がある。「人のしないことをする、自ら茨(いば
ら)の道を切り開いていくことをモットーとするソニーマン」という一文は63年(昭和38年
)に中央公論に書いたもの。世界で初めてテープレコーダーやトランジスタラジオを開発
・販売した“ソニー・スピリッツ”の原点がここにある。60~80年代に株式マーケットを
魅了した、この「ソニー魂」は、今、PBR(株価純資産倍率)が0.5倍台、つまり株価が正味
の資産価値の半分程度と主力ハイテク株では最も低いレベルにまで落ち込んだ現実に、
その存否が鋭く問われている。
■根っこに大企業病?
この短文を書く前に、過去数年のソニーの有価証券報告書に目を通して、一つ違和感を
覚えるところがあった。
エレクトロニクス、ゲーム、音楽、映像など、分かりやすかったかつての事業区分が、
事業再編という名目で2年前から他の名称に変更。エレクトロニクスを、2009年に「コンス
ーマープロダクツ&デバイス」と「ネットワークプロダクツ&サービス」に分けた。ところが
昨年4月に今度は、前者のコンスーマープロダクツ&デバイスを「コンスーマー・プロフェッ
ショナル&デバイス」に変えた。この事業に赤字垂れ流しのテレビ事業が含まれる。しかし
、看板(事業区分)からは構成品目がすぐにはつかめない。株主や投資家を惑わせるだけだ。
小手先の“組織いじり”に見られかねないこうした動きと33年ぶりの安値形成の底に、
「大企業病」が潜んでいるとしたら、即刻、根を断つ必要がある。
注目すべきは、10月末に見込まれる4~9月決算発表段階での経営陣の姿勢。逆境を正面か
ら見据えた「ソニー魂」が確認できるなら、株価は猛反騰するだろう。売り込まれていた
ユーロの値戻しがここ一両日、進み始め、ソニー株も動意づいてきた。果たして、出直りの
前触れか。いよいよ、真価が問われようとしている。