コオロギのオスは、つがいでいる時に危険に遭遇すると、
自分が食べられてしまうリスクを犯してもメスを先に逃がすという研究報告が、
6日の米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に発表された。

英エクセター大(University of Exeter)のローランド・ロドリゲス・ムノス(Rolando Rodriguez-Munoz)氏の
研究チームは、赤外線ビデオを使ってスペインで野生のヨーロッパクロコオロギを観察した。
すると、人間で言えば男性がドアを開けて女性を先に通すように、オスがメスを先に巣穴に
逃げ込ませている様子が映っていた。

ムノス氏はこの観察結果について、「騎士道精神」が人間だけに限られたものではなく、
また教育や知性とも関係がないことが示されていると説明している。
「知性があるとか、感情が豊かだとはいえない小さな昆虫のオスでさえ、
『騎士道精神』を発揮してパートナーを守ろうとしていることが分かった」

同研究室では、コオロギの繁殖行動に関する研究の大半を行ってきた。
従来の解釈では、オスの防御行動はメスの気を引きつけ、
別のオスと交尾させないためだとされてきたが、今回の結果はこの解釈に反する。

反面、研究対象のオスのコオロギたちは、自分の身を賭してメスを守った結果、
メスと一緒にいる時間が長くなり、より多くの子孫を残せるという「褒賞」を得ることができた。

研究チームでは、「1匹だけでいる場合、メスとオスの捕食される確率は同程度だが、
つがいでいる時に攻撃を受けるとメスの生存率が高まり、オスの生存率が低くなった。
捕食リスクが上がる代償として、つがいのオスは交尾の回数が増え、
そのメスとの子どもをより増やすことができる」と結論付けている。

今回の報告は、繁殖期を3回連続で観察した結果で、ムノス氏は
「将来の世代にも『騎士道精神』が受け継がれるのかどうか、確認したい」と述べている。