最近になって、景気減速と、2年間低金利を維持するという米連邦準備理事会(FRB)の「公約」を受けて、米国債の金利は昨年夏よりもさらに低い水準へと低下、債券バブルは破裂に向かって膨らんでいる。
我々にまったく納得がいかない市場のひとつが、米財務省物価連動国債(TIPS)である。最近の利回りは、リプリーの『Believe It or Not!(信じられないような実話を集めた番組)』に取り上げられんばかりだ。指標となる10年物TIPSの利回りは史上初のマイナスとなった。投資家は、今より低い価値に相当する資金を10年後に受け取るために政府に金を貸していることになる。
この驚愕すべき事態は、米経済についての桁外れに悲観的な見通しでしか説明できない。経済理論に基づくと、長期TIPSの実質利回りは、経済の実質成長率に近づく。1997年に初めてTIPSが発行された時、投資家は3.4%の利回りを受け取ったが、それは、過去50年間の国内総生産(GDP)伸び率を平均した3.6%に極めて近かった。10年物TIPSの過去の平均利回りは2.5%となっている。
投資家は、抑制のきかない政府債務と赤字に対する懸念から、TIPSや金といったインフレヘッジに殺到した。S&Pによる米信用格付け引き下げは、FRBが紙幣増刷に走ることへの不安を高めた。しかし、株式も、貴金属にように、インフレヘッジとなる実物資産である。S&P500種採用企業の1株配当は過去50年間、年5%増えており、同期間のインフレ率の平均4%を軽く上回る。実際、1960年代、90年代、2000年代の低インフレ期と、70年代、80年代初めの高インフレ期の双方において、配当の伸びはインフレ率を上回っている。