中国浙江省の温州市でディーゼル発電機の生産やホテル経営などを手掛ける東信集団の王崇煥会長は、典型的な起業家だ。懸命に働き、実践を重んじ、あらゆる機会を捉えるのに余念なく、逆境を跳ね除けてきた。
 その王会長が、中国の中小企業が今直面している信用状況について話すと、それほど楽観的に聞こえない。「30年仕事しているが、こんな高金利は見たことがない。借金したら自殺するようなものだ」と言う。
 中央政府が企業による投機阻止やインフレ抑制の措置を講じたことで、温州市の中小企業は信用収縮の直撃を受けていると、ブルームバーグ・ビジネスウィーク(8月15日号)は伝える。広東省など輸出が産業の中心となる中国南部の各省や揚子江デルタ地域にある町の中小企業も苦しめられている。賃金上昇や原材料コスト高騰、人民元高ですでに苦境に陥っているところへの追い討ちだ。
 温州市の中小企業団体トップ、周徳文氏は、「ますます状況が悪化している」と語る。JPモルガン・チェースの中国担当グローバル市場部門会長、李晶氏は9日、「貸し渋りに苦しむ中小企業が増えている」と指摘した。
 周氏の推測によれば、中国では1000万社以上の中小企業の約2割が、稼働率が半分程度で破綻のリスクに直面している。こうした企業の大半は従業員数が300人に満たない。「政府が中小企業支援と与信状況を改善させる新たな政策を打ち出さなければ、この割合は来年の春節(旧正月)までに倍の4割となる」との予想だ。
             年利300%
中国人民銀行(中央銀行)は昨年10月以降、5回の利上げと9回の預金準備率引き上げを実施した。クレディ・スイス・グループのチーフ地域エコノミスト(香港在勤)、陶冬氏は、大手の国有企業に対し銀行各行はまだ融資を続けているものの、「中小企業向けは完全に断ち切られた。中小企業に十分な流動性が全くないのが現状だ」と述べる。
 北京にある中央財経大学のチエンチュン・リ教授は、銀行の貸し渋りが、地方の商業組合や質屋、正式な営業許可を持たない地下銀行などによる融資の灰色市場の拡大を促していると指摘する。同教授によれば、こうした非公式な貸し出しセクターにおける融資の規模は2009年には6兆6000億元(約79兆円)だったが、今年6月までに推定10兆元に膨らんだ。正式な銀行融資残高の約2割に相当するという。
陶氏の試算では、非公式なセクターから短期融資を今借り入れると、最高で月6%の金利となる。9カ月前は1.8%にすぎなかった。リ教授によれば、温州市のような地域では、年利が最高300%にも達するという。中国の公式の1年物貸出基準金利は6.56%。  北京大学のマイケル・ペティス教授は、「雇用コストも資本コストも上がっている。中小企業は2つの前線で苦しめられている」と話す。