山本周五郎の傑作『赤ひげ診療譚』は、江戸の小石川養生所を舞台にした時代小説。“医は仁術”に徹する壮年医師「赤ひげ」に、最初は反発するが、次第に共感していく青年医師の心の変化を描く▼貧しい庶民の現実と向き合い、徒労に見えてもなお信念を曲げない「赤ひげ」の姿に、青年は思う。「温床でならどんな芽も育つ、氷の中ででも、芽を育てる情熱があってこそ、しんじつ生きがいがあるのではないか」(時代小説文庫)▼病気、事故、不況の嵐、自然災害――人生は苦闘の連続だ。その過酷さに足をすくわれることもあろう。だが、それでも色あせぬ情熱が真の情熱であり、たとえ倒れても何度でも立ち上がるところに、人間本来の輝きがあるといえまいか▼宗教家の池田名誉会長さんは「忍辱の心とは、いかなる娑婆世界の嵐に晒されようと、心が負けないことだ。心が恐れぬことだ。心が揺るがぬことだ」と綴る▼信念は、貫いてこそ信念。何があっても励まし合い、“自他共の幸福”に生き抜く人生でありたい。