東京電力の作成データ「エネルギー別発電設備出力」には、同社の電源別出力が記載されている。電源を大別すると「水力」「火力」「原子力」「新エネルギー等」の4つ。左記は、2009年度の出力設備としてそこに記されている数字だ(カッコ内は他社からの受電を含んだ電力)。
しかし、原子力発電所の設備利用率が発表される一方で、その他の電源の利用率はなぜか表に出てこない。特に、最も大きな電力供給源である火力発電所の利用率がわからなければ、国民が原発廃止の是非を判断することはできない。
実は、原子力を優先するために電力会社が火力発電所の稼働を巧妙に抑制してきた証拠がある。電事連が作成した「モデル試算による各電源の発電コスト比較」という資料に記載された「算定値」という小さな表だ(表下、写真参照)。
02年、東京電力が自主点検作業記録を改竄したことが発覚した。いわゆる「東電の事故隠し」である。そのため翌春に東電管内のすべての原発が停止された。幸か不幸か、原発のイメージを致命的に損なうような事態には至らなかったため、そのときは「電力消費が比較的少ない時期の運転停止」ということで収束した。この資料は、その翌04年1月に開かれた経産省の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会に電事連から提出されたものだ。
同委員会は、発電コストの比較・分析・評価を目的として、原子力行政を推進する政府官僚と電力会社との間で開かれた会議。一般の目にはほとんど触れることのない電源コストの具体的なデータや比較分析が、詳細に記されている。
表には、00~02年における原子力と火力の「平均実績単価」と「実績設備利用率」の数値が示され、当該期間における1kW時の発電単価は「原子力8.3円」に対し「火力10円」とある。
ところが、火力のカッコ内(7.3円)には、欄外に「設備利用率を80%に換算した場合の試算値」という注意書きが付されている。随分と不公平な比較だが、原発コストが安くないことは弊誌前号(7月4日号)でお伝えした通りだ。
ここで注目したいのは、「41%」という火力の「実績設備利用率」である。国内の原発が78%という高い稼働率で動かされていた同時期、火力は持てる発電能力の半分以下という低い稼働率に抑えられていたということだ。
電事連の別の内部資料をもとに作成したここ16年間の原子力設備利用率(表上参照)を見れば、当時の原子力の利用率が高いことがわかる。表の数字は年間平均値だが、例えば01年3月の数値は90.8%だ。前号でも指摘したが、総括原価方式でコストを肥大させた電力会社は、すでにこの時期には電気料金のさらなる上昇を控えるため、稼働を調整したコスト抑制で利潤を維持していた。
それにしても、これだけ余力があれば原発を止めても火力で十分補えるのではないか。「原発なしでも電力は不足しない」―この数字が示す火力59%のポテンシャルが、それを暗示している。
それでは、現在の火力の利用率はどの程度か。今、国民が「原発を廃止したら電力は足りるのだろうか?」と迷っているなかで、火力発電所のポテンシャルこそが重要な判断材料となる。
【水力】898万7000kW(1463万8000kW)
【火力】3818万9000kW(4486万2000kW)
【原子力】1730万8000kW(1818万8000kW)
【新エネルギー等】4000kW(4000kW、他社受電なし)
合計すれば、6448万7000kW(7769万2000kW)。この数字が同社の設備上の発電能力ということになる。ちなみに、新エネルギー等とは「風力」「太陽光」「廃棄物発電」「地熱」「バイオマス発電」のことだ。
