世界で最も安全な金融資産とされる米国債に関し、
連邦債務上限引き上げをめぐる混迷で格下げやデフォルト(債務不履行)の懸念が生じたことで、
基軸通貨ドルへの信認は根元から揺らいでいる-。
三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジストは今秋、1ドル=70円を割り込む水準まで
ドル安・円高が進むと予想する。

宇野氏はインタビューで、格付けと担保価値が最上級の米国債について
「長年にわたり想定外だった格下げやデフォルトがひとたび現実味を帯びた以上、
実現の有無にかかわらず、広範な投資家による持続的なドル売りは止めようがない」と語った。
ドルの対円相場はまず、「今後1-2カ月で70-75円が中心になる」と予想。
欧州債務危機の影響も残るが、「ドル安の大きな流れは変わらない」と述べた。

さらに宇野氏は、2007年央からのドル安・円高は08年秋の金融危機以降、
09年4月と昨年5月のドル高値を結んだ右肩下がりの線と、08年12月のドル安値を通る
平行線の間で推移していると指摘。この平行線は値幅が約15円で、下限は11月初めに70円を
割り込むと説明した。

ブルームバーグ・ニュースが昨年末に実施した11年の相場見通し調査では宇野氏は11人中1人だけ、
今年後半から本格的なドル安局面が訪れると回答。年末は60円とした。
今年のドル高値は4月につけた85円53銭で、宇野氏の予想(85円)が現時点では最も近い。
ブルームバーグ・データによると、市場関係者はドルが対円で年末に85円、来年には90円に
上昇するとみている。

▼米債務上限問題
米オバマ大統領は31日、ホワイトハウスで声明を発表、民主・共和両党議会指導部が
債務上限引き上げと財政赤字削減で合意したことを明らかにした。
同大統領は声明で「両党指導部は赤字を削減し、デフォルトを回避することで合意に達した」と
述べた。

オバマ政権と野党・共和党が過半数を占める米下院は連邦債務上限の引き上げ額や手法、
増税の有無をめぐり対立。連邦債務は約14兆3000億ドルの上限を5月に突破したが、
ガイトナー財務長官が8月2日までは特例措置で借り入れ継続が可能だと表明した経緯がある。

米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は7月14日、1941年以降
トリプルAにある米国の格付けを引き下げ方向で見直すと発表。
90日以内の格下げ確率が2分の1以上とした。
21日にはデフォルト回避だけでなく、信頼できる赤字削減計画が必要だとけん制。
ムーディーズ・インベスターズ・サービスも13日、1917年以来「Aaa」としている米国債の
格下げ検討を表明した。フィッチ・レーティングスも6月、格下げの可能性に言及した。

宇野氏は、S&Pが4月に米格付け見通しを引き下げた際、約3カ月以内に格下げとなり
「大いなるドル売り」が生じると予想した。
米財務省はその後、連邦債務の上限引き上げ期限を8月2日に設定。7月には格付け会社からの
圧力が高まった。ドルは4月の85円台から足元で一時10%以上下落した。

インターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数は先週、5月に付けた過去最安値に迫った。
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では米国債の保証コストが09年3月以来の
水準に上昇。
ただ、ギリシャなどと異なり、米国債相場は堅調だ。
10年物国債利回りは2.77%と年初来の最低を付け、過去10年の平均4.12%を下回る。

円・ドル相場は1日に一時76円65銭に上昇。震災直後の3月17日に記録した76円25銭の
戦後最高値に迫った。
野田佳彦財務相は7月29日、「一方的に偏った動き」と円高進行をけん制し、
為替介入には「一時的には一定の効果がある」と言明。
しかし、宇野氏は、ドル全面安が鮮明になれば「円売り介入しても効果は極めて薄い」との見方を
示した。 (ブルームバーグ)