「逢魔(おうま)が時」という言葉がある。いかにも「魔」に逢(あ)いそうな薄暮
の時間帯を指す。菅直人首相が辞任の時期をめぐって、矢面に立たされている。しか
し、政治家にとって出処進退は魔物である。この「逢魔が時」の対応で政治家の器量が
わかるが、どうにも菅さんは器が小さいようだ。

 けれども、早期退陣を迫る鳩山由紀夫前首相が菅さんを「ペテン師」と呼ぶのは、い
かがなものだろう。沖縄の米軍普天間飛行場の移転先を「最低でも県外」と約束しなが
ら、結局は県内移転で米国と合意したのはどなたであったか。どっちの方がペテンであ
るか。

 結局は、民主党に優秀な政治家たるべき人材がいないということではないか。といっ
て自民党にいるといっているわけではない。日本の衰退は、すでに自民党政権時代に芽
ばえていたというべきであろう。

 しかし、こんなことも思う。こんなに毎年のように首相が代わっていいのか。小泉純
一郎さんの後、安倍、福田、麻生の自民党の世襲三氏、それに鳩山さんが続く。まるで
日本の首相の任期は一年と決まっているように、次々と代わっていく。
 菅さんは内閣発足時に「奇兵隊内閣」と名付けた。もともと、長州の奇兵隊は惨敗し
た下関戦争や幕府との戦いで人手不足になった藩が急ごしらえで、つくった戦闘部隊で
ある。
 「逢魔が時」は大禍時(おおまがとき)とも書く。つまり、災いが起きやすい時間帯
だ。いよいよ夜は近い。民主党内でどんな暗闇の乱闘が起きようがかまわない。
 二十九歳の若さで死んだ奇兵隊創設者、高杉晋作の辞世の句と伝えられる「おもしろ
きこともなき世をおもしろく」に、看病していた野村望東尼が「すみなすものは心なり
けり」と付けたと言われているが、大震災に苦しむ国民は、政局騒動をおもしろがって
なんかいられない。