福島第一原発事故への対応をめぐり、菅直人首相自身の度重なる配慮を欠いた発言が
物議を醸している。中には首相の言葉が正確に伝わっていないケースもあるが、
首相の意図しないメッセージが被災地に伝わり、混乱したのは事実で、政府不信に拍車をかけている。
十三日に首相と官邸で会った松本健一内閣官房参与は、首相が原発周辺の避難区域に十年、
二十年住めないと話していたと、記者団に述べた。内陸部に新しいエコタウンをつくる必要性を話す中での
発言だったというが、避難住民にとってはショッキングな内容。
首相から「自分は言ってないですから」との電話を受けた松本氏は数時間後、
再び記者団に「私の発言だった」と訂正したが、与野党とも信じない。地元自治体の一部首長や野党は
「無責任な発言」として首相を批判。収拾のために、福島選出の渡部恒三・民主党最高顧問が
松本氏更迭を求める事態に発展している。
三月中旬に首相と面会した笹森清内閣特別顧問も、首相が「東日本がつぶれることも想定しなければならない」
と述べたことを、記者団に明かした。危機意識が薄い東電にいら立つあまりの発言だったが、不安をあおる言い回しだ。
これらは、首相自身ではなく、面会者が外に伝えて批判された発言。枝野幸男官房長官は
「首相に会う方が(首相の発言を)外で説明する時は、誤解を招かないよう留意を徹底しなければいけない」と
苦言を呈したが、松本氏も笹森氏も首相が起用した人物だ。
一方、震災をめぐる野党対策でも、首相の発言は混乱を招いた。
今月十一日、首相は自分と同じ東京工業大学出身の斉藤鉄夫・公明党幹事長代行に電話し、
細野豪志首相補佐官を原発災害担当相に起用したい考えを明らかにした。
首相なりの人脈で野党との対話を探ったようだが、閣僚人事について野党議員に相談するのは異例。
民主党内では「野党対策はこっちに任せてほしい」(別の幹部)と困惑する声が広がった。
「この政権は終わっている」。脇の甘さによって、首相に対する被災地、野党の信頼が大きく揺らぐ中、
政府内でさえ、こんな声が出ている。