腹が立つ。言わずにはいられない。そんなとき作家のマーク・トウェインは、手紙を書いた。洗いざらい憤まんをぶちまける。それを暖炉の上に置く。3日たってから読み返し、投函すべきかどうかを判断した。手紙はほとんど、火の中に投じられることになったという。
▼詩人・高村光太郎の選集に「出さずにしまった手紙の一束」と題する文章が収められている。パリ滞在中の書簡である。投函されなかっただけに、そこには父への反抗心、青春の不安と本音などが赤裸々につづられている。
▼ここから学べることがある。まず、手紙を書く行為には、怒りや不安を鎮める効果があるということ。そして口にはしないけれど、当然ながら、人はいろいろな思いを抱えているということ。相手の“沈黙の声”にも真摯に耳を傾けたい。
▼時として人生には、言語に絶するほどの悲劇が襲う。再起の第一歩は、やはり人間的絆の再生から始まる。今こそ「真の対話」に努めたい。