聞き慣れない着信音が携帯電話から響いた。
11日午後2時45分すぎ。
岩手県山田町の平屋建てアパートに住む主婦、小田島朋美さん(28)は携帯の画面に目をやった。
「緊急地震速報 強い揺れに備えて下さい」
画面を見ると同時に、激しい揺れに襲われた。
「コタツの下に隠れて」
夫の宗史(むねふみ)さん(31)は仕事で不在。長女の侑胡(ゆう)ちゃん(4)と次女の侑杏(ゆあ)
ちゃん(3)に声をかけた。
ガチャン。茶わんが流し台に落ちて割れた。棚のグラスが飛び出し、破片が飛び散った。
「ママー」
揺れが収まると、2人の娘が飛びついてきた。部屋の窓から外を見た。駐車場の地面がひび割れていた。
近所のお年寄りが外に飛び出ていた。
「すごかったですねー」。「津波が来ています。避難して下さい」という役場の放送が聞こえた。
携帯が鳴った。実家の青森県八戸市の母親からだった。「大丈夫?」。次に地元の親友から電話がきた。
「こっちはケガないよ」と答えた。
親友と話しながら外に出た。アパートは海岸から数十メートル離れた高台にある。ふと、民家と民家の間に
目をやると、真っ黒な水平線が見えた。家の1階と2階の間くらいの高さだった。
「目の錯覚?」
事態がのみ込めないまま、電話口の親友に叫んだ。
「津波が来た!」
電話をズボンのポケットにしまった。波に民家が倒される「グシャッ」という音が背中で聞こえた。
「侑胡、侑杏、早く!」
アパートに戻り、玄関口で2人を呼んだ。長靴を履かせ、ドアを開けると、道路が水浸しになっていた。