妻が真顔。

これこそが私にとって最も恐ろしい瞬間。

そして最も聴きたくない妻の台詞。
「欲しいものがあるんだけど……」

また、ヴィトンのバックかよ。
いったい同じようなものを
いくつ買えば気が済むんだよ。
もういい加減にしてくれよ。
と内心で思いながら
マックスで顔がひきつっている私に妻がひと言。

「隣の１００坪の土地が欲しい」

ドラマでよくお茶を吹き出すシーンがあるけれど
自分が本当に吹き出すとは思いもよらなかった。

しかも両鼻から。
耳がつーんとした。

本気で心の底から思いました。

頼む！
ヴィトンのバックにしてくれ！

とはいえ、ねだられたら
買わないわけにもいかないし。

印税を始めとした
権利収入もたまってきたので
そろそろ書斎もかねた
新事務所の購入を考えていたのに……。
この出費は痛い。

田舎のくせに固定資産税は
どちゃくそ高いし
甲府は住みにくい場所です。

また今年も一生懸命に働くしかないな。

たっ、頼む！ ヴィトンのバックにしてくれ！

たっ、頼む！ヴィトンのバックにしてくれ！