有名な「蕎麦事件」
午後から始まる集合研修を前に
研修担当者と食事をすることになり
私は「蕎麦」を注文しました。
私の中では、蕎麦は夏であろうが冬であろうが
「冷たい蕎麦(ざるそば)」が常識。
一方で常に気が利く担当者のTさんは
ちょうど真冬の寒い時期でしたので
こまやかで優しい配慮をしてくださり
温かい蕎麦が準備されていました。
予約された席につくと同時に目の前に出された
湯気の立つどんぶりを見て私は無愛想に言いました。
「なんだ、これ? こんなもん、頼んでないけど」
温かい蕎麦を食べたことがない私には
見たこともない得体の知れない物体が
なぜか目の前に置いてあるという感覚でした。
「蕎麦ですが……」
「えっ、蕎麦って言ったら冷たい蕎麦でしょ」
「すっ、すみません。 すぐに交換します」
「あっ、いいよ。 別に。 時間もったいないし」
実は集合研修前だったので何を食べても同じなんです。
極度の緊張症なので味なんて何も感じませんので……。
でも担当者は、温かい蕎麦を注文したことに
ヘソを曲げて不機嫌になっていると思ったようです。
私は不機嫌でも何でもなく、
ただ研修前で極度に緊張していただけだったのですが、
彼女には、ものすごく怒っているように見えてしまったようです。
彼女は、この蕎麦事件の後、
私に対してものすごく苦手意識を持つようになり
「 蕎麦ごときで機嫌が悪くなるなんて
本当に 『ちっちゃい男』 」と思い続けていたそうです。
「個々人の持つ 『常識』 こそ、
いわゆる 『観念』 という思い込みである」
ブラッシュアップ系の研修で私がよく力説していること。
もちろん私に落ち度がありました。
今となっては、その誤解もとけたのですが
ただ、とってもとっても残念なことに
なぜか私に対する「ちっちゃい男」という
評価に関しては依然として何の変化もないようです。