以前ご紹介した総合診療医の安東満さんの連載
「患者との会話から学ぶ-納得の医療を求めて」に
「七つの『ど』」に関する続きの記述がありましたのでご紹介します。
“ローテク”の問診も進化
コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)などの
検査機器に加え、あらゆる細胞になれる万能細胞「iPS細胞」を利用した遺伝子治療…。
医療に関するニュースを見聞きしていると、医師の私ですら
「現代医療=ハイテク医療」と感じてしまいます。読者のみなさんも同じではないでしょうか。
しかし、実態は違います。医療の誕生とともに生まれたとされる
″ローテク″の代表「問診」も着実に進化しているのです。
ところが、ハイテク医療と比べると、どうしても地味なため注目されないのす。
私はもともと放射線科医でした。放射線科は、エックス線やMRI、CTなどの
検査機器だけでなく、がんや脳腫瘍などを放射線で治療する医療機械も扱います。
まさに、ハイテク機器に囲まれた職場です。
そんな私が問診をはじめとするコミュニケーション重視の診療に取り組んでいるのは、
ハイテク医療に限界を感じたから。ハイテク機器は確かに便利です。
どんどん進化しているので、病気を見つけ、治療する精度も格段に上がっています。
それでも、万能ではありません。
この連載でも書きましたが、具体的な症状は
どんなに最新鋭の検査機器であっても見分けられません。
病気の多くは、患者さんが訴える自覚症状に基づいて判断するしかないのです。
とはいえ、ハイテク医療を完全否定するつもりはありません。
今後の医療に不可欠であることは間違いないのです。
ただ、ハイテクに頼り切ってはいけません。
ローテクとハイテクがバランスを保つことが大切なのです。
「七つの『ど』」を考案したのは、自覚症状を整理し、より効率的な診断が
可能になることで、ハイテク医療のさらなる活用につながると考えたからです。
医療に限らず、日本人はハイテクや新しいものに目が向きがちです。
だからこそ、問診をはじめとしたローテクの大事さを再確認する必要がある。
私はそう確信しています。
(2010年3月11日(木) 山梨日日新聞より)