20. コミュニケーションの実態 その4 ( 2005年 9月19日 )

言葉は大事ですが、言葉以外のノンバーバルメッセージも大事です。
集合研修でもお伝えしていますが、コミュニケーションのコツの一つは
『言葉はシンプル』に。(長く伝えれば、多く伝えれば良いというものではない)
それと野党は、否定語を使いすぎたように感じます。
あれでは、自民党の批判ではなく宣伝になってしまいます。
今回の選挙で小泉さんは、言語、非言語の両面で
意識的に、かなり磨きをかけてきたように感じました。

「小泉語は強かった」    朝日新聞 CM天気図 天野祐吉

「政治の世界で歴史的ななだれを起こしたのは、書かれた言葉の力ではない。
それは語られる言葉の魔力だけだ」と言った政治家がいる。ヒトラーだ。
 小泉さんがヒトラーだなんて言うつもりはないが、こんどの選挙で
小泉新党(じゃない自民党)が大勝した原因も、それにつきるんじゃないか、
とぼくは思っている。テレビの街頭演説でも、小泉さんには文字に書かれた
原稿を読んでいる感じがない。それにくらべると、ほかの党の党首たちは、
しゃべっている言葉がほとんど書き言葉である。
 もちろん原稿を棒読みしているようなヘボ役者はいない。
が、まず書いた原稿があり、それを暗記してしゃべっているという印象が、
どうしてもつきまとう。ヒトラーの仮説に従えば、
それだけでもう勝負がついているようなものだ。
 それにしてもこの異常な小泉人気は、いままでの政治家たちの言葉が
いかに書き言葉(それも空疎な)的であったかを証明している。
言葉が聞こえてこない政治家たちへの人びとの欲求不満が、
小泉人気をいやが上にもあおったと言っていいんじゃないだろうか。
 以前にも、話し言葉の魔力で人気を得た首相はいる。田中角栄さんである。
が、小泉さんと角栄さんの違いは、角栄さんの言葉の魅力が村芝居的な
それだったのにくらべて、小泉さんの言葉の魅力は町芝居のそれだ。
そのことが、都市の無党派層にまで、小泉さんが広い人気を集め得た原因だと思う。
 テレビのCMでも、自民党と他党との間には、そんな『言葉』の違いがあった。
書き言葉的な言葉で自民党を批判する野党と、話し言葉の魔力を使っている小泉さん。
小泉語の魔力は、「破壊」と言わずに「ぶっこわす」と言うようなところに、
いちばんはっきり現れている。
「改革を止めるな!」という広告的スローガンを、呪文のように繰り返すのも、
小泉語の特徴である。呪文の効果という面から言えば、問題は改革の中身ではない。
そのひびきをしつこく繰り返すことである。
 大敗した民主党が、次の選挙でこそ政権交代を現実のものにしようと思うなら、
硬直した野党語で小泉さんを批判してもはじまらない。
小泉語を『ぶっこわす!』言葉を見つけることだ。
貧しい言葉で豊かな明日を語るくらい、人びとをシラケさせるものはない。