タンゴとフィギュアスケート | ダンス講師のフィギュアスケート鑑賞記

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Enrique Santos Discépolo(エンリケ・サントス・ディセポロ)は次のように述べている。

 

“El tango es un pensamiento triste que se baila”. 

 

https://akifrases.com/autor/enrique-santos-discépolo

https://www.eldesconcierto.cl/2016/01/25/el-filosofo-del-tango-enrique-santos-discepolo-y-la-desazon-de-lo-moderno/

 

日本語に訳すと、

「タンゴとは踊ることのできる悲しい思いである」という意味になるだろう。

私は、これこそがタンゴの真髄であると考える。

 

 

日本ではタンゴと聞くと、どのように認識されているか?

恋愛のための踊りだとか、色気をアピールするための踊りだと思っている人が多いのではなかろうか。

しかし、それは誤解だ。

タンゴは色気だけでは無い。

 

タンゴの歌詞を聴くと、その内容は恋愛だけでなく、

貧困とか、絶望とか、狂気とか、死とか、

社会的なものが多いのだ。

 

元々タンゴは港町の労働者達の憂さ晴らしの音楽と踊りが起源だと考えられている。そのような土壌にバンドネオンが加わって、仄暗さが生まれた。

 

 

 

ディセポロが作詞作曲した名曲『ジーラ・ジーラ』の内容も、本当に困っている時ほど誰も助けてくれないという社会的本質を突いた厭世的な内容だ。

Verás que todo es mentira

Verás que nada es amor

Que al mundo nada le importa

Yira... yira...

Aunque te quiebre la vida,

Aunque te muerda un dolor,

No esperes nunca una ayuda,

Ni una mano, ni un favor.(抜粋)

https://es.wikipedia.org/wiki/Yira,_yira_(canción)

 

 

フィギュアスケートではタンゴが使用されることは多い。

男女で組むペアやアイスダンスで色気が出るのは仕方ないことかもしれないし、アルゼンチンのミロンガのワンシーンのようで素敵だ。

だがシングルで色気ありきで表現するタンゴはあまり好みではない。

 

 

 

私が知る中で最も素晴らしいタンゴだと思うのは、

キム・ヨナさんの2014ソチ五輪フリー『アディオス・ノニーノ』だ。

この曲は親の死を追悼してピアソラが作曲したものである。

ステップシークエンスではタンゴのリズムを上手に刻みながら、上品に悲哀を表現した名演中の名演だ。

ミステリアスでニヒルな微笑を浮かべる場面からも世界観を感じさせる。

しかもオリンピックの、最終滑走で、完全ノーミス。

国境を越えて脱帽せざるを得ない。

 

 

 

 

もう一度言わせていただきたい。

“¡El tango es un pensamiento triste que se baila!”