105歳の医師の原点 | 昭和の鬼平が物申す

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鬼平が平成の世相を斬る

聖路加国際病院名誉院長だった日野原重明氏が、7月18日に105歳で亡くなられた。

 

「今日すべきことを精一杯!」(日野原重明著)は、著者が80歳になる1990年ごろ書かれた半世紀でもある。超高齢化社会のネガティブな側面ばかりが強調される昨今だが、日野原先生は「老い」の豊かさを説き続けた人でもあった。

 

将来のことをいたずらに思い煩わず、今日すべきことを精一杯やりなさい――医師として多くの患者と交流し、その最期を見届ける中で、身体的に健康であるというだけでなく、人生の充実とは何かを追い求めてきた日野原先生。延命の医学から、生命を与えるケアへの想いをこう話す。

 

「人生には誰にでもいつかは最期の日がきます。できればその終末時にも意識が保たれて、最期のお別れの言葉を交わせる時を、病人と家族に持たせてあげたい。私は最近そのような思いを、とくに、がん末期の患者に対して持つようになってきました。そしてそれは患者に対してだけでなく、自分もそんな状態になればぜひともそうして人生の幕を閉じたいと願うのです」

 

現場に立ち続けたからこそ見えてきた真実と、自身が人生をまっとうする中で得た深い気づきからにじみ出す言葉に、私たちは勇気づけられ、こんなふうに歳を重ねられたらと願わずにいられない。