この先通行規制中につきまして

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暗黒につつまれたサイト
勝ったと思うなよ・・・!

4話前半まで公開した「必殺ワザはウォシュレット」を個人的な事情で非公開にさせていただきます。

6月頃にはまた更新再開するのでよろしくお願いいたします。


Amebaでブログを始めよう!

「あー、なんか悪かったな・・・連れてきちまって。妹さんいるの知らなくてさ」

ピレカが頭を掻きながら詫びてくる。

「いや、人間の世界行けるのならいいよ。」

「うーん、基本的に仕事以外で行くのはなるべくやめといた方がいいんだがなぁ・・・で、妹の話聞かせて」

ピレカは唐突に態度を変えてきた

「妹は私より勉強も優秀だしスポーツ面も優秀だったし凄い人だったよ。自慢だった。メンタル面も強いし大丈夫だと思うけど、心配なんだ」

「ふぅん・・何かあたし悪人みたいだな。本当にごめん」

「どうせ私死んでるんでしょ?死んだら二度と会えないじゃん。生き永らえさせてくれただけで嬉しいよ。」

「よーし、じゃあ今日は特別に人間界で自由行動させてやるよ。3時間たったら強制送還だけど。じゃあ人間界へ送るぞ。あ、くれぐれも問題は起こすなよ」

「わかってる。」

「行くぞ・・・ん?」

急にピレカの表情が変わった。

「どうしたの?」

「人間界で異変が起こってる。」

異変?

もしや先ほどポルクスが言っていた「仕事」の事?

「異変については話してなかったか・・・異変っつーのは、その名の通り人間界に起こった異変、怪異現象と言ってもいいだろう。まぁそんなもんだ。この異変が発動するとまずいんだよなあ・・・普段あたしらは人間相手にドンパチやってるけど、異変は化物や精霊だの人間外の生物が相手だからなぁ。すまん由芽子、今日は妹さんや友達に合わせてやる事ができない。」

「ねぇ、私も一緒に連れてって」

「バカヤロー!異変はすげぇ危険なんだ!命を落としかねないんだぞ。新入りのお前が行ったら8割近くの確率で命を落としちまう!せっかくの命なんだから大切にしろ!」

先ほどまでのピレカとはあきらかに雰囲気が違う。

だが、由芽子も単なる好奇心で行きたがっているわけではなかった。

「私は精霊として生きていくの。だから、仕事を見ておかないといけない。お願い連れて行って。死んだらそれまでの存在だって思ってもらってもいいから」

「ダメったらダメ!それに、これは仕事といっても特別な仕事だ。何の参考にもならんぞ?」

「嫌とは言わせない。私も連れて行ってよ」

がんとして言う事を聞かない由芽子の目を見たピレカは、呆れた表情を浮かべた。

「隠れてろよ。」

どうやら、ついてくる許可を下ろしたようだ。

「うん」

こうして由芽子とピレカは異変が起こった人間界へと向かった。


数分間異次元空間を移動した後、人間界へと降り立つ。

「ん、ジャングルに来たぞ」

どこのジャングルかは分からないが、異変が起こっているのはこの地のようだ。

「気配を殺して進め。いいな」

「うん。」

二人は誰にも、動物にすら気取られないようにゆっくり動いていく。

「居たぞ。あれだ」

ピレカが前方にある木を指差す。

「え、あれが異変の正体?」

一見、それは何の変哲もない木だった。

「気をつけろよ。一瞬の油断が命取りだからな」

ピレカは険しい表情を浮かべている。

その木は吹き付ける風に揺れているだけで、特に怪しい点も見当たらない。

「あれのどこが危険なの?」

「お前はまだ『探知能力』が目覚めてないからわからないだろうが、あたしには分かる。あの木からは邪気がプンプン漂ってるんだ。」

探知能力というのは、物の気配を感じ取り、それが何かを判断する能力。精霊最大の能力といってもいいほど重要なものだった。

「気づかれた!」

突然ピレカが立ち上がり、バックステップを踏みながら木から遠ざかる。

「え?」

由芽子はその動きについて行けなかった。

おそるおそる前方を向く。

「ウォォォォォォォォアアアアアアアッッ」

巨大な木に、顔が生えている。腕が生えている。雄叫びをあげている。

「・・・・ッッッ!!!」

由芽子は絶叫を上げた。あまりの恐怖心に汗が思わずにじみ出る。

「由芽子!逃げろ!」

由芽子はそれを聞くととっさに判断能力を発揮し、ひたすら辺りを逃げ回った。

『大木の化物』は腕を振り上げ、木々をなぎ倒しながらピレカと由芽子に襲いかかってきた。

「なんて化物だ・・・これクラスは何年ぶりだろうか」

ピレカは焦りを見せていた。彼女らが人間界に滞在できるのは残り2時間40分。それまでにこの『大木の化物』を片付けないと、人里への侵攻を開始してしまう。

「ここがどこか分かりさえすれば、ある程度有利に戦えるんだけどなぁ・・・」

深いジャングルの中で、辺り一面が木木木。

『大木の化物』がなぎ倒した木の先にも木の海が広がっており、位置を掴めない。

「正々堂々ブッ殺すしかないみたいだなー」

そう言うとピレカは『大木の怪物』に突撃していった。

「うおおおおおおおおおおらっ!」

ピレカは『大木の怪物』の足元まで素早く移動すると、一気に空高くまでジャンプした。

「今ここで止まれ!『衝撃波』ッッ!」

ピレカは左手を『大木の怪物』の眼前でかざし、強烈な衝撃波を放った。

(すごい・・・)

茂みに隠れていた由芽子は、ピレカのパワーを見て憧れの念を抱いた。

(けど、今私には何もできない。)

「これじゃぁ・・・死なないよなぁ!?デカブツ!」

「ウォォォォォォォオアアアアアアアアッッ」

『大木の怪物』はすぐ起き上がると、巨体を活かした恐るべきパワーのなぎ払い攻撃を繰り返す。

内一発がピレカに命中し、その体を遠くまで吹き飛ばす。

「ぐあっ・・・」

木に背中を打ち付け、思わずピレカは吐血した。

「あたしが、負けてちゃ、いけないよな・・・」

それでも強い覚悟を胸に、ピレカは『大木の怪物』へと立ち向かう。


「じゃあ」
ピレカが口を開いた。
「あたしの友達の家行って、精霊の仕事について教えてもらいにいこうぜ。」
「精霊の仕事?」
「ああ、はじめに一つ言っとくけど、人間達が想像してるような仕事じゃないからな。なんだっけ、こう・・・RPGに出てくる奴みたいな」
「ドラクエ7とか?」
「そう!あたしもドラクエは7が一番好きなんだー」
どのドラクエが好きだとかいう話はしてないよ。
てか、ノリで言ってしまったけど、精霊界にゲームってあるのか?
多少疑問を抱いた由芽子だったが、まぁスルーする事にした。
「えっと、こっから徒歩5分ぐらいで着くから。」
「5分?まわりは草原と森ばかりだけど。」
「いや、5分で着くよ?」
すたすた歩き出すピレカ。徒歩スピードは別段速いわけでもない。
大自然に囲まれたこの家から徒歩5分の位置に家があるだなんて、考えられん



「ていうか、ピレカさん」
「んー?」
由芽子は少し疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「私をどうやってここに連れてきたの?」
「えーっと、あたしが仕事で夜中にパトロールしてたら夢にうなされてるお前を見つけてな。念のため水晶玉で確認してみたら、強い運命が感じられてな。10分ぐらい調べるとその正体が分かった。それでヤバかったから連れてきたってわけさ。」
「そっか・・・って、仕事ってそんなことするの!?」
「そういう訳だ。まああたしの友達が詳しく話してくれる(話させる)から、あたしには聞かないでくれ面倒い」
なんでこのぐらいの質問で面倒なのか由芽子にはさっぱり理解できなかった。



「お、見えてきたぞー」
え?まだ周りは森林一色だ。どこにも民家なんて見当たらない。
「この木」
「へ?」
ピレカは、目の前にある何の変哲もない木を指差す。
「だから、この木があたしの友達の家 ほら見てろよ・・ふんっ!」
ピレカは木をこんこんと叩いた。
「おーい、ポルクス!いるかー?」
「誰だー?」
「あたしだよあたし」
「ピレカかー?今開けるぞ」
その声と同時に、木の裏側から風が吹き付けてくる。
「入るぞ、由芽子」
「う、うん。」
どういう構造になっているのだろうか、木の裏側に渦巻き状の穴が開いている。
この中に家があるとは到底思えない
とりあえず、その怪しげな穴に入ってみた。

しばらく不思議な感覚を味わう。
何か、トイレの「大」レバーを使って水を流した気分だ。
それが10秒ほど続いた。



「だ、大丈夫か、由芽子?」
「うええ・・・」
「だからお前んちそろそろリフォームしろって言っただろ」
やっとの事で由芽子は顔を上げる。
そこには、ピレカ、そしてこの家の家主らしき精霊がいた。
「そんな金ないんだよ!こっちは一年暮らすのでやっとなんだよ!」
「お前がYOU!TUBEに変な動画投稿してその準備資産に金をかけるからだよ!」
「う、うるさいな!再生数みてびびんなよ!」
「どれどれ・・・?1000再生!ププププ」
「謝れ!YOU!TUBEに埋もれてる全ての低再生数動画に謝れ!」
「何億の動画があるんだよ!?」



このままではいつまでもどうでもいい事この上ない喧嘩が続きそうだったので、由芽子は止めることにした。
「まぁ、まぁ」
「ていうか、コイツは誰だよ」
「あたしが連れてきた。」
「由芽子です。精霊になったばかりでよくわからないので、色々と教わりに来ました。」
喧嘩が止まってよかった・・・
ようやく本題に入るようだ。
「色々って・・・ようは、仕事のことについて教えればいいんだよな?」
「ポルクス・・・お前馬鹿なのに察しはいいんだな」
「うっせえカバ!」
「だーまれバーカ!」
ピレカさん、事あるごとにこの人を挑発しないでくださりますか。
心の中で突っ込んだら、うんざりした表情の由芽子にピレカが気づいたようで、少し反省の色を見せた。
「ゴホン。精霊っていうのは、主に2つの仕事がある。精霊によってはどちらも取ってるが、大抵はどっちか1つの仕事をしている。」
「どんな仕事なんですか?」
「『精霊界にて商売や取引を行い、物産品の流通を安定させる等の仕事を行う精霊界仕事タイプ』と、『人間界に出て、人助けをしたり悪人を裁いたりする人間界仕事タイプ』の2つだ。」
「えっと、ピレカさんは人間界の仕事だったよね?」
「もうさん付けしなくていーぞ。まぁ、そうだが。」
ポルクスは言葉を続ける。
「精霊界タイプの場合はのうのうと仕事してればそれでいいが、人間界タイプの場合、場合によっては戦闘力・治癒能力なども身につけなければならない。また、人間界に滞在できるのは1日3時間だけだからスピード性も重要だな。」
「厳しいんですね・・・」
由芽子はもともと体育会系女子なので、運動はある程度得意だった。
しかし、そこまでやれと言われると流石に自信をなくす。
「ま、心配しなくてもいいよ由芽子。あたしも元々あんまり慣れてなかったけど、今はまぁまぁ楽しく仕事できるしさ。」
「私がいつ人間界の仕事をやると言った!?まぁ、やりたいけどさ。」
「なら決まりだな。ポルクス、それでいいだろ?」
ポルクスはちょっと考えたが
「まーいいんじゃね」
何も考えてないような返事をした。



「んー、由芽子、仕事いつ行く?」
「私は別にいつでもいいよ」
「あたしもう疲れちゃったんだ。だからしばらく行けそうにないから、数日後になるだろうけどいい?」
「全然オッケーよ」
「いい子だなやっぱお前は。そんないい子にはプレゼントを上げよう。」
なんで私が子供扱いされてるの、と由芽子はぼそっと呟いたが、気づいたのはポルクスだけだった。
「はいこれ」
ピレカから手渡されたものは、携帯電話らしきものだった。
「これは・・・ケータイ?」
「精霊界専用だけどな。人間界の携帯電話は使えないんだよここ」
「へぇ。って、そりゃそうか。ありがと」
「礼には及ばんよ。いつかあげようと思ってたし あたしの番号教えとくね」
「MJKEJGEKRWGWOGEIGAGEGWJKAGWGWE・・・って、何これ暗号?」
「は?電話番号だけど」
「そう・・・(なんで数字じゃないんだ)」
無駄に長い電話番号を入力し、登録完了ボタンを押す。
3秒後、「登録完了♪」というメールが到着する。細かいなぁ



「ポルクス、邪魔したなー」
「おう。また来い」
「今度こそはリフォームしとけよ?」
「うっせえバカ!」
「お前が馬鹿だろバーカ!」
小学生かよ、と思わず突っ込みを入れてしまう由芽子。後悔はしていない


「あれっ?」
ポルクスの家を出たあたりで、由芽子はひらめいた。
(人間界に戻れるってことは、もしや普通に友達とも喋れる感じ?)
せっかくなので聞いてみることにした。



「ねえピレカ、人間界に仕事に行った時って、私たちは人間に見えるの?」
「当たり前じゃねーか。そうじゃないと仕事にならんよ」
「ってことは、友達とおしゃべりとかもできちゃうの!?」
「勿論。ただし、3時間しかタイムリミットがないからな。無駄に人間界に行きまくるのはやめたほうがいい。それに、お前が人間じゃなくなったって言ってその友達が信じてくれるのかよ・・・」
「さ、さあ。てか、私の妹は何してるんだろ」
「あれ、妹とかいたの?」





ここから先は少し妹の話になるだろうが、付き合ってほしい。
「あーかったる。続きは3話でやろうぜ」
何てこと言うんだコイツは。まぁいい、では3話にて。

「おやすみ~」
いつもと何も変わらない一日を終え、由芽子は自室の電気を消す。
「明日は・・文化祭か」
ここ数日は文化祭の準備で忙しく、疲労困憊の毎日だったなぁ。
明日への期待に胸を躍らせ、由芽子は布団を被り、目を閉じた。



その夜、由芽子は夢を見た。
普段からあまり夢を見る体質ではなかったので、かなり珍しいことだ。
その夢の中で、由芽子は学校に登校していた。
「ぶんっかっさい♪ぶんっかっさい♪」
上機嫌な由芽子は誰もいない通学路をスキップしながら通っていく。
今通っている道を抜けると、とある大きな交差点に出る。そこは交通量も多く、通勤中の人も多いため由芽子はスキップを止め、普通に歩くことにした。
この横断歩道を渡れば、数十メートル先に由芽子が通っている高校がある。
信号が青に変わり、人々は歩き出す。
その人に混じって由芽子も歩こうとしたが、靴紐が解けてしまい結ぶのに10秒ほどの時間をかけてしまった。
「急がなきゃ信号かわっちゃう」
靴紐を結び終えた由芽子は走って横断歩道を渡る事にした。
その時、横から暴走車が来ているのにも気づかずに・・・




由芽子は、暴走車にはねられた。それだけではない、はねられた後、500メートルほど引きづられた。はねられた際にはまだ意識ははっきりしていたが、
暴走車が停止した際には、由芽子は腹を割かれて臓物だらけの死体となっていた。


「はっ!」
由芽子はあまりにもの恐怖に目を覚ます。
「何・・・いまの夢・・・」
由芽子は恐怖で周りが見えなくなっていた。
そうしているうちに、由芽子はある事に気がついた。
(この部屋、私の家じゃない・・・?このベッドも私のものじゃない。)
由芽子は飛び起きて部屋の電気を着けた。
「どこ・・・ここ?」
由芽子はここでやっと異変に気がついた。自分は知らない場所に連れてこられている、と。
「お、起きたか」
扉の向こう側から女の人の声が聞こえた。
「誰!?」
「詳しい事は後で話す。」
「私を・・・さらったの?」
「ま、言い方をかえればそういう事になるかな。ただし、理由もある。」
そう言うと、声の主は部屋に入ってきた。
身長は由芽子より少し低い155cmほどで、髪型は銀色の長髪。普通の人間では考えられないような身なりだった。
「何で私を誘拐したの」
「詳しい事を話すと長くなるんだが・・・まぁ、いいや今ここで話す。今からあたしが言う事は全て真実だ。心して聞きな」
信じ難かったが、情報を手に入れられるかもしれないこの情報では信じるしかなかった。
「教えてよ」
「まずあたしの自己紹介から。あたしはピレカ。人間には信じられないだろうが・・あたしは精霊だ。」
何を言い出すかと思えば、あたしは精霊??
そもそも精霊は伝説上の存在で、現実にいるわけなんかない。
「精霊って・・嘘つかないでよ」
「言っただろ、今から言う事は真実だって。・・・じゃあ、あたしがただの人間じゃない事を証明してやるよ。」
そう言うと、ピレカは傍に置いてあった水晶玉をベッドの上に置く。
「今からこの水晶玉に映し出される映像は、全て真実となり得た事だ。というか、お前があのまま目覚めたらこうなってた。」
何の話かよく分からず、由芽子は混乱する。
「行くぞ。」
ピレカは目を閉じ、水晶玉に手をかざした。すると、水晶玉はそれに反応するかのように光り輝き、ある映像を映し出す。
そこに映っていたのは、学校に向かっている由芽子だった。
「へ・・・?」



「ぶんっかっさい♪ぶんっかっさい♪」
上機嫌な由芽子は誰もいない通学路をスキップしながら通っていく。
今通っている道を抜けると、とある大きな交差点に出る。そこは交通量も多く、通勤中の人も多いため由芽子はスキップを止め、普通に歩くことにした。
この横断歩道を渡れば、数十メートル先に由芽子が通っている高校がある。
信号が青に変わり、人々は歩き出す。
その人に混じって由芽子も歩こうとしたが、靴紐が解けてしまい結ぶのに10秒ほどの時間をかけてしまった。
「急がなきゃ信号かわっちゃう」
靴紐を結び終えた由芽子は走って横断歩道を渡る事にした。
その時、横から暴走車が来ているのにも気づかずに・・・

「ちょっと・・・待ってよ。これ、これ・・・」



由芽子は、暴走車にはねられた。それだけではない、はねられた後、500メートルほど引きづられた。はねられた際にはまだ意識ははっきりしていたが、
暴走車が停止した際には、由芽子は腹を割かれて臓物だらけの死体となっていた。
「私が今日見た夢・・・・全てが同じ。まるまる一緒。」
「あたしからも言いづらいんだが、これは全て現実となる事だった。お前はあの朝死亡する事が「運命」によって確定していたんだ。
そこであたしが精霊の仕事として、お前を助けた。」
「じゃあ・・・あなたは、命の恩人・・・という訳なの??」
信じられなかった。あの夢が現実に起こってしまうだなんて。
このピレカという人が、それを回避させるためにここに連れてきただなんて。
「そういう事だ。・・・それから、これも言いづらいんだが・・・お前はもう人間として生きていくことはできない。」
「!?」
今までピレカから聞いた事でも一番の衝撃だった。人間として生きていけないなんて・・・
やはり、この人物は嘘をでっち上げて私を誘拐したに違いない。由芽子はそう思った。
「お前が人間に戻ると、どこに居ようと即座に死亡する。それは嫌だろ?だから私はお前を祝福し、精霊として転生させた。」
「嘘よ・・・変な口実で私を騙そうとしたって無」
「だから真実だって言ってるだろ!さっきの水晶玉、人間ごときの技術で作れると思うのか!?」
言われればたしかにそうだ。夢と全く同じ内容を映し出す水晶玉なんて、現代の人間では到底開発できないはずだ。
そんな水晶玉を持っているだなんて、やはりただの人間ではない。
「でも、人間なんでしょ?」
「精霊の話聞けよ。あたしは精霊。あんたも精霊。って言ったって、初日じゃ受け入れられないのも無理はないよな・・・・ じゃあ、外を見て気分転換しようぜ」
こんな状況で気分転換とは呑気な奴だ。
「外の世界も人間界とはちょっと違うからな。それ見りゃここが精霊の世界だって信じてくれると思うけど。」
ピレカが玄関のドアを開けると、一気に蒸し暑くなった。
「暑っ、今冬なんじゃ?」
「精霊界じゃ夏だぜ。さ、外見てみろよ。」
由芽子はおそるおそる外を見てみた。

いたるところに自然があり、動物達が戯れている。
中には見たこともないような生物や絶滅したはずの生物も居た。
「あれ絶滅したんじゃ・・・それに、あんな動物もはじめて見る」
「あれは精霊界にしかいない動物だからな。あ、ここは全部私の家の庭だから動物がいるだけで、ちょっと街のほうにいったら建築物とかもいっぱいあるぞ。」


そこでやっと由芽子はピレカの言う事を信じる気になった。
「ごめんなさいピレカさん。疑った私が悪かったです。」
「信じる気になったか。てか、敬語やめてくれ」
「ごめんピレカさん、疑ってごめん」
「お前根が真面目なんだな・・・」
命の恩人をさん付で呼ぶぐらいいいじゃない。というか、由芽子はそうしないと気がすまないのであった。
「ようこそ、精霊界へ。」