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大人たちの過ぎゆく日々

身近な家庭菜園/現代小説

  夫は必ず一泊で帰って来るので、それほど夢中になっている様子は見られない。ただ映画の夫婦割りチケットを、ポケットの中から見つけた事があった。涼子は一緒に観た記憶など無いから吃驚して、そ のまま洗濯機を回してしまったことがある。

 

夫婦割りは男女の関係、間違っても男同士ではない事は分かる。これを問えば夫婦間に亀裂を及ぼすのは確かなので、咄嗟に粉々にしてしまったのだ。

 

何故なんだろう・・私も潜在的には、恋焦がれて誰かに抱かれたい気持ちもあるのだろうか? そんな落ち着かない時は、可愛い猫の温もりが心穏やかにしてくれる。膝に乗せて珈琲一杯が気持ちを楽にしてくれるのだ。

 

夫から「今日は夜勤」とLINEが入ると同時に、条件反射のように人恋しくなってしまう自分が存在してしまう。夜勤が本当だとは思えないが・・そんなに60過ぎの夫がいいのだろうかと思う。私は夫に対して興味が無いが、ただ健康で居てほしいとの願いはある。

 

相手はどんな女かと・・ふと男はいつまでも若い女性が好きだと想像を膨らますけど、意外に同世代の飲み友達くらいの関係とも思える・・それは変わらない付き合い方が物語っている。

 

私も素敵な相手が居ればどんなに癒されるかと今では思うほどに、自分の過去の出会いを振り返ってしまう。

 

女の幸せとは何だろう、結婚する幸せ、子を生む幸せ、子供の成長、家庭のやすらぎ・・今考えると愛が欠けていたかも知れない。

 

住みよい生活を維持し、想い出作りに追われていた。愛が置き去りになっている現実、再び愛を追及することは間違いなのか ? もし人生やり直し出来れば、駆け落ちのような愛が欲しい・・と馬鹿な想いが横切っては夢から覚める。つづく

あらすじ

「涼子」43歳は、このままの日々に疑問が残っていた。ある日、仲の良かった「弘美」と「冬子」に再会する。25年という過ぎゆく時に真実を知っていく・・・ストーリーは非現実的な創造・妄想を巡らすようなファンタスティックな話ではありません。身の回りに起こってくる小説を意識しました。

 

(1) 夫は総合病院から帰ってきて薬を飲んでいるし、涼子は町医者のカルテに載る歳になっている。娘も若くして嫁ぎ、住み慣れた4LDKの一戸建てもガランとしている。子供部屋は倉庫化してしまい、今は夫と冷め切った生活を送っているのだ。 

 

私たちは偶然の出会いで激しく燃えた恋ではないけど、新婚当時は幸せに暮らしていた。それがいつの間にか他人同士ような勝手な行動ばかりで身体にも触ることも無くなってきていた。

 

ただ一緒に生活しているので、やるべき事は互いに分かっていて夕食は一緒に食べ、私が料理を作れば皿洗いをしてくれる。気分のいい時は夫が料理を担当し、私が後片付けもする。

 

その流れは阿吽の呼吸なのだろう、二人で会話もする唯一の時間でもある。好きな酒も夜になると勝手に飲んでTVを観て笑い、飼い猫を可愛がる仲の良い夫婦と、近所からは思われているようだ。

 

でも私は、夫のちょっとした一言で気分を害しているのを知らないのだろう。それとも私に余裕が無いのだろうか?そんな夫婦を演じて、自分を押し殺していることもある。

 

夫もそうだとしたら、一つ歯車が狂うと爆発させてしまうかも知れない。それは以前に一度あって、離婚の暴言まで吐いていた事もあった。ただ、そこまでには至らない夫婦でありたいと気を付けている。

 

夫は60の定年を迎えていたが、仕事の経験を活かし再就職した。仕事は楽なようで、体を鍛えたいのかジムに通っている。夫とは一回り以上違う涼子も、外に出て少し夫と離れた生き方をしたいと思っているのだ。

 

誕生月が同じ8月生まれなので忘れたことはないが、プレゼントなど忘れることにしている。ただ娘夫婦からのプレゼントに一泊旅行の招待を受けた時は夫婦で行ったが、相手が違えばどれだけ楽しい旅行かと思ったものである。

 

泊まった旅館の部屋内には豪勢に湯が湧いていたので、久しぶりに夫の裸まで見てしまったが、相変わらず筋肉質で若い頃の体を維持しているのは感心する。

 

そうかといって夫の体に興味も無く、触りたくもないほど年月が経ってしまっている。そんな夫は、なぜ鍛えてるのか? 健康の為とか言ってるが、歳はとっても女性には持てそうな感じなのだ。

 

退職前は仕事の関係で一ヶ月に一度は、お決まりのように出張に出かけ宿泊していたのは理解出来る。それでも再就職してからも同じように夜勤があるからと、月1〜2回は家には帰って来ない。

 

そして泊まってきた翌日は夜遅く帰ってくる。話し掛けられるのは困るようで「ただいま」は言うが、姿を見せずに自分の部屋に籠ってしまうのだ。

 

再就職先の夜勤に対しては不信感しかないけど、涼子はホッもする時間でもある。生活を乱さなければ何泊でもしてこいと、開き直りの気持ちもあるのだ。つづく