横浜・日本大通りの日本新聞博物館で開催中の
「日米開戦70年 水木しげるの戦争と新聞報道」展へ行ってきたっス。
最近水木サンの本をまとめて読破したこともあってかなり感銘を受けてまいりました。
あ、ちなみに水木サンというのは水木氏の一人称です。


$海とひこうき雲


 今年の12月8日は真珠湾攻撃による日米開戦から70年。
「ゲゲゲの鬼太郎」で有名な水木しげる氏は、この戦争で南方の激戦地・ニューブリテン島ラバウルに送られ、最前線で一兵士として生き抜きました。最前線中の最前線バイエンに配属され、決死隊として夜間の見張りをしていたときに敵からの襲撃を受け、部隊は全滅するなか一人だけ奇跡的に生還するという壮絶な体験をしています。その後爆撃に遭って片腕を失いました。
 
 妖怪ものの漫画でも有名な水木サンですが、『ラバウル戦記』『娘に語るお父さんの戦記』『トペトロとの50年』で、自身の過酷な戦場での体験を描いています。また、『総員玉砕せよ!』『ダンピール海峡』『KANDERE (カンデレ)』など、戦争を描いた漫画を数多く発表しています。これらの作品を通じて、繰り返し、戦争の不条理、むなしさを語りかけています。
 
 展示は①戦況―1942年まで②水木しげる戦場へ③南方の戦場④戦況の悪化と終戦まで⑤戦中の言論体制―で構成。水木さんの作品や提供写真など約90点、戦況を報じる新聞本紙と号外や写真ニュースなど約90点が紹介されています。水木氏の作品を手に取って読むことができる読書コーナーも設けられていました。
 実体験から描かれ書かれた水木サンの約90点の絵や漫画などの作品は全て、めちゃリアルで過酷なものでした。戦争の悲惨さがズンズン響いてきます。船底に詰め込まれる兵士、手榴弾で自決し吹き飛ぶ兵士、満身創痍でジャングルを彷徨う水木サンなど…

 僕は水木サンの描く点描の絵が好きなのだが、本で見た絵も大伸ばしで鑑賞できて、感激しました。「トペトロとの50年」単行本版の表紙うらの絵が一番最初に展示してありましたが、あれはやはり思ってたとおり天国と地獄を表現したものだった。戦車や戦闘機で人間が吹っ飛び草木が枯れる地獄から、原住民たちが楽しそうに笑ってる色とりどりの天国のほうへ歩いていくメガネの人は多分水木サンなんだろうな~。

 新聞記事の展示は、1941年の開戦から1945年の終戦までの全国紙や地方紙の本紙や号外、写真ニュースなども約90点。真珠湾攻撃やアリューシャン作戦などは興味深かったっす。開戦時は「英米に一大鉄槌(てっつい)を」と勇ましい論調。1942年6月のミッドウェー海戦は実際は大敗だったが、大本営発表を受け東京日日(毎日)新聞は、「戦史を絶するほどの戦略」と報じ「東太平洋の大勝」との事実とは違う社説を掲載しています。
 
 展示は、その「大本営発表」を成立させた背景にも触れられていています。
(大本営発表とは、太平洋戦争において、日本の大本営の陸軍部及び海軍部が行った、戦況などに関する公式発表のことである。 当初はほぼ現実通りの発表を行っていたが、ミッドウェー海戦の頃から損害矮小化発表が目立ちはじめる)
 開戦前年の1940年12月に内閣情報局が設置されて情報の一元管理が強化され、1941年1月には内閣総理大臣の記事差し止め権が認められた。開戦3日前には、「日本軍に対する国民の信頼を強化する」よう義務づける情報政策の基本方針が閣議決定されていました。とんでもないことが起きていたんすね…(+_+)

 会場内は若い人も年配の方も多く混雑していました。12/25までやってるのでもう一回来たいっす。

水木しげるの娘に語るお父さんの戦記 (河出文庫)/河出書房新社

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総員玉砕せよ! (講談社文庫)/講談社

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トペトロとの50年―ラバウル従軍後記 (中公文庫)/中央公論新社

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おしまい