蔡英文総統あと2週間「お疲れさまでした」
8年の支持に感謝「団結して前進しましょう」
蔡英文総統が今月20日、退任する。
2016年1月16日夜、私は台北市の民進党本部前の集会に参加していた。
総統選挙の開票は5時半ごろから始まっていて、
蔡氏は開票直後から、国民党の朱立倫候補に大差を付け勝利は”確定”していた。
それでも午後9時に、蔡氏が集会場に現れて、勝利の挨拶とお礼を述べた時は、
感激で身震いした。
会場には大勢の若者の姿があった。2013年のひまわり学生運動で、
馬政権を追い詰めた熱気が「蔡総統 加油!」のシュプレヒコールから
伝わってきたような気がした。
「明日の朝日が新しい台湾を照らす、という言葉で演説を締め括った蔡さんに
応えた台湾の若者たちがこの夜は一際輝いていた」
これは、集会直後にホテルに戻りブログにアップした文章だ。
あれから8年、私は蔡総統の言動を見続けて来た。
他国の指導者を8年も注目してきた理由、
それは、大国の横暴に小国の指導者が何処まで屈せずに、
信念を貫き通すかという政治家の”度胸”を蔡氏に感じたからだと思う。
最後まで50%以上の支持を得た蔡氏、
アジア初の同性婚法を成立、GDPの40%増、国産潜水艦など防衛力向上
欧米からの「台湾支持」の獲得など台湾の国力と国際的な地位向上を
実現した。
一方で、原発停止中に起きた複数の大規模停電に対する対処の遅れや、
封じ込めていたコロナの感染爆発に対する混乱、ワクチン確保の失敗など
国内問題では、失策が相次いだ。
さらに、安定多数の政権下で起きた民進党議員の腐敗で、支持率が低下、
統一地方選で敗北して、党主席の辞任に追い込まれたりした。
それでも人々は、蔡氏を退任する最後まで支持した。
それは何故なのか。
個人的な見方だが、蔡氏は政治家としてほとんど”嘘”をつかなかったからでは
無いかと思う。
「公開は最大に、秘密は最小に」
これは総統就任直後に政府の情報公開に対する方針の際、述べた言葉である。
「パートナーを選ぶ権利は平等でなければならない」
これは、同性婚合法化実現に取り組む際の指示である。
「台湾は明日の香港にならない」
武力行使をちらつかせながら、統一を迫った習近平への断言である。
「自らの力で護らなければ、誰も助けに来ない」
国産初の潜水艦建造に向けての決意表明である。
蔡氏を信頼して支持したのは国民だけではない。
就任後、中国により外交関係を7か国も減らされた台湾だが、
EUが「台湾支持」を議決したり、欧米の議員団が相次いで台湾を訪問して、
蔡政権の堅持する”自由と民主”を称賛した。
「台湾は独りではない、私も台湾市民です」とチェコの議長が
蔡氏に伝えたように、世界が「TAIWAN」を「国」として認めるまでになった。
蔡氏が台湾を率いる以前、日本を含めて台湾に関する報道は極めて少なかった。
また伝える際にも中国の顔色を窺って「国(中華民国)」ではなく
「その他の地域」扱いだった。
それが今は殆ど台湾を「国」扱いし、東京五輪開会式の際、
NHKのアナウンサーが「チャイニーズ台北」という名称を無視して
「台湾が入場してきました」と叫んで、
中国が慌てて国際映像を遮断する事態となったが、抗議は無かった。
私は8年間、蔡英文氏の度胸を見て来たような気がする。
李登輝氏と並ぶ偉大な指導者蔡英文氏、
8年間お疲れさまでした。