台湾 6割が228事件を知らず
蔡英文総統「真実を知ることが和解への道」
過去は時代と共に風化する。
平成の世論調査で、第2次大戦で日本が戦った相手が米国と知らなかった
若者が過半数いたことがニュースとなった。
戦後の政府が事実を避けて、戦没者慰霊式で事を済まそうとした結果で、
若者に責任はない。
同じような事が台湾でも起きている。
台湾の国民の6割が1947年2月28日に起きた「228事件」を知らないという。
加害者である国民党が38年間戒厳令を敷き、謝罪はおろか被害者や遺族に
事件を語ることすら禁じて来たからだ。
学校の歴史教育では、統治した日本と国共内戦で敗れた相手の中国共産党を
非難することに終始した。
事件から77年を迎えた28日、政府は嘉義県で祈念式典を開いた。
蔡総統は演説で、
「228事件は台湾の歴史の傷跡であり、真実を知ることによってのみ
傷を縫い合わせ、真に和解することができる」と述べ、
全ての国民に歴史と向き合うことの大切さを訴えた。
蔡政権は過去8年間、独裁体制期の歴史の見直しを進め、
2000件に及ぶ名誉回復と補償の申請を受け入れて、
これまで総額日本円で200億円を支払った。
それでも被害者遺族は未だに苦しんでいる。
(台中市で行われた式典)
被害者の戸籍には今なお「スパイ」「盗賊」「反乱」など虚偽の容疑が
そのまま記されている。遺族はこれらの記述の削除と名誉回復を市に求めている。
黄国栄副市長(中央の男性)は、こうした記述が561件あることを認め、
調査を行っている事を明らかにした。
台南の式典に出席した頼清徳次期総統は、
「5月20日の就任後も、蔡総統が進めた歴史の見直し作業を継続する」と
強調した。
そのうえで、
「政治被害者やその家族へのケアを拡充し、誰もが事実を受け入れ、
真実を一つ一つ公表する開かれた政府を目指す」と話した。
事件の際、200人以上が虐殺された高雄市では、市長と遺族らが記念碑に献花して
1分間の黙とうを捧げた。
陳其邁市長(奥の男性)は
「過ちは許せるが決して忘れない、台湾で起きた歴史を知ることは
台湾の自由と民主主義の価値を知ることに繋がる」として、
市民に事件への関心を呼び掛けた。
一方で絶対に許さない人々もいる。
台北市では、228事件の弾圧を命じた蒋介石の曽孫の蒋萬安市長に抗議する
グループが、式典会場に入るのを警察が阻止、押し問答となった。
彼らは「蒋介石は殺人者」と記し、
「蒋萬安は謝罪し、一族は台湾から出ていけ」と叫んだ。
228事件については、個人の謝罪ではなく国民党が謝罪して、
真相究明に協力しない限り、これからも2月28日が来るたびに、
本省人と外省人の対立感情が目を覚ますことになる。
この事件で、日本人も犠牲になったことを私たちも知っておく必要がある。